最新記事
孔子学院

中国共産党の「トロイの木馬」と言われる孔子学院はアメリカからほぼ姿を消した?

US Colleges Shut Nearly All China-Funded Confucius Institutes

2023年11月6日(月)18時32分
マイカ・マッカートニー
「孔子平和賞」の授与式

ノーベル平和賞に対抗する「孔子平和賞」の授与式。2011年の受賞者はロシアのプーチン首相(当時)で、写真は代理の女性(北京) REUTERS/David Gray

<中国のプロパガンダやスパイ活動の拠点として警戒されている中国語教育機関「孔子学院」が次々に閉鎖。ついにアメリカ国内ではほぼゼロになったが>

米政府によれば、全米の大学に設置されていた中国語の教育機関「孔子学院」は、ほぼすべて閉鎖されたという。

【動画】中国の動物園で撮影された「人間では?」と疑われるマレーグマ

貿易や人権、香港での民主化デモ弾圧など、さまざまな問題をめぐって米中対立が深まるなか、孔子学院に対する監視の目は厳しくなっていた。米議会は孔子学院の設置を受け入れた学校に対する連邦資金援助を制限し、国務省は全米の孔子学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を中国政府の機関と認定した。

その結果、米会計監査院(GAO)が最近発表した報告書によると、中国政府がアメリカの大学と提携してキャンパス内に設置した孔子学院の数は、約100から5以下に減少した。

この報告書は、閉鎖の最大の要因として大学が「米政府からの資金援助が受けられなくなる可能性」を挙げており、調査対象となった約100校の大学の61%が、このことが閉鎖の決定に「大いに影響した」、14%が「ある程度影響した」と回答している。

一方、政府からの圧力を閉鎖の大きな原因として挙げた回答は32%、大学の評判への懸念は14%、財務上の懸念は15%、中国政府の政策への懸念は5%だった。

孔子学院が脚光を浴びたのは、提携大学と共同で運営資金を提供する中国政府が中国共産党のイデオロギーを広げるために孔子学院を利用しているという懸念が高まったため。教育を隠れ蓑にした共産党の「トロイの木馬」だというわけだ。

名称を変えて存続か

米議会のマルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州選出)は今年6月、孔子学院を設置した大学に対する国防総省の資金提供を制限する法案を提出。その発表の際に、「中国政府が監督する孔子学院は、中国共産党のプロパガンダでわが国の大学キャンパスを汚染してきた。国防総省がこのような教育機関を支援する理由はない」と声明で述べた。

孔子の名を冠した施設の数はほとんどゼロになったが、中国政府関係者が名前を変えて運営を再開する戦略をとったケースもあると報じられている。

全米学者協会は、2022年6月に発表した孔子学院の閉鎖に関する調査報告書の中で、「孔子学院を完全に排除した大学を、確信をもって特定することはできない」と述べている。

「多くの大学が、さまざまな形で中国のパートナー機関との関係を継続している」と、米会計監査院の国際問題・貿易担当のキンバリー・ジアノプロス部長は本誌に語った。

孔子学院を閉鎖した大学の多くは、学院の開設にあたって提携した中国の大学との関係を維持しており、一部のアメリカの学校では、「孔子学院が提供していた内容に匹敵する」中国語や中国文化プログラムを今でも提供している、と彼女は付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、31万人に学生ローン免除 美術学校

ワールド

米名門UCLAでパレスチナ支持派と親イスラエル派衝

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力

ワールド

中国大型連休、根強い節約志向 初日は移動急増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中