最新記事
孔子学院

中国共産党の「トロイの木馬」と言われる孔子学院はアメリカからほぼ姿を消した?

US Colleges Shut Nearly All China-Funded Confucius Institutes

2023年11月6日(月)18時32分
マイカ・マッカートニー

ジアノプロスによると、国防総省では、孔子学院という名称ではなくても、国防総省による資金援助の基準を満たさないプログラムを特定しているところだという。

しかし、米政府関係者による政治色の強い発言だけでは、孔子学院の複雑な背景は理解できないと指摘する専門家もいる。

「孔子学院の教師たちは中国共産党の美辞麗句を宣伝したのか?そのとおり。一方的に彼らを悪者扱いしたことで、本物であったかもしれない交流の機会が制限されたか?それも正しい。従って、孔子学院の閉鎖はプラスとマイナスの両方の影響をもたらしている」と、米ワシントンのシンクタンク「グローバル台湾研究所」のリサーチ・アソシエイト、エイドリアン・ウーは本誌に語った。

ウーは、孔子学院だけに注目するよりも、大学のプログラムに対する中国の資金がどこからくるかを精査し、その影響を見極めることが重要だと述べた。そして、中国からの資金提供がすべて悪いとは限らないが、「自己検閲の環境を醸成したり、意図せず中国共産党のレトリックをそのまま繰り返すような」潜在的な悪影響は避けられるよう教員が訓練を受けるべきだと付け加えた。

台湾にとってのチャンス

孔子学院の閉鎖は、他の西側諸国でも同様に行われている。

イギリスのリシ・スナク首相は昨年、ボリス・ジョンソン前首相の後任に指名された際、イギリスで運営されている孔子学院30カ所をすべて閉鎖すると主張した。

孔子学院の閉鎖は、台湾がソフトパワーを強化できるめったにないチャンスだ。

米議会上院は9月、アメリカと台湾の政府が共同出資する米台教育イニシアチブへの参加を高等教育機関に検討するよう促す超党派の決議案を提出した。

ウーは、米台教育イニシアチブには戦略的な効果があり、これまでのところ「目覚ましい成長」を示していると考えている。

そのひとつである台湾標準中国語学習センター(TCML)は、アメリカに35カ所、ドイツ、フランス、英国に各2カ所、アイルランド、スウェーデン、ハンガリー、オーストリア1カ所設立されており、世界的にプレゼンスを拡大しようとしている。

孔子学院とは異なり、TCMLの講師は中国に雇われているわけではないので、中国当局に縛られることはない。また、中国で使用されている簡体字ではなく、台湾人が現在も使用している伝統的な繁体字を教えている点も特徴となっている。

ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗弊インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

維新、連立視野に自民と政策協議へ まとまれば高市氏

ワールド

ゼレンスキー氏、オデーサの新市長任命 前市長は国籍

ワールド

ミャンマー総選挙、全国一律実施は困難=軍政トップ

ビジネス

ispace、公募新株式の発行価格468円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中