最新記事
軍事技術

米空軍の最新鋭ステルス爆撃機「B-21レイダー」は中国の次世代超音速ミサイルにかなわない?

China's Hypersonic Missiles Can Kill US B-21 Bomber, Researchers Say

2023年11月29日(水)17時48分
アーディル・ブラール
米空軍の最新鋭ステルス爆撃機「B-2レイダー」

米空軍の最新鋭ステルス爆撃機「B-2レイダー」(2022年12月2日)。今月初飛行を行った U.S. Air Force/REUTERS

<米空軍の最新鋭爆撃機「B-21レイダー」の初飛行が行われたが、中国が開発中の超音速ミサイルは既にその性能を上回っているという研究が出た>

米空軍の最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の初飛行が11月10日におこなわれたが、中国などアメリカの敵対国のミサイル技術の進歩がいつの日か、B-21の能力の能力を上回ってしまうのではないかという懸念は付きまとう。

飛行中のステルス爆撃機が「グーグルマップ」に映り込んでいた

 

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが11月27日付の記事で示唆したところによれば、マッハ6(音速の6倍)で自律飛行する中国の極超音速ミサイルは、最新鋭のB-21も迎撃できる可能性があるという。

この記事で引用されている中国の学術研究は、世界の2大経済大国のあいだで続く軍拡競争を象徴している。同研究論文の著者らが所属する中国の西北工業大学は、中国人民解放軍とのつながりを理由に、アメリカの制裁リストに入っている。

第二次世界大戦以降、世界の覇権を握ってきたアメリカは、軍事技術でも数十年にわたってリーダーの地位を享受してきた。しかし、中国は全速力で防衛技術の研究開発を進めており、米国の新兵器を迎え撃つことも視野に入ってきている。

B-21レイダーは、アメリカの過去数十年の戦闘航空における最も偉大な前進だ。B-21の最重要課題のひとつは、次世代のミサイル技術が米空軍の最も進んだ爆撃機をも発見・追跡し、場合によっては撃墜できるようになっても航空優位を保つことだ。

以前なら不可能な攻撃パターン

サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事は、中国がおこなった軍事作戦のシミュレーションでは、「B-21に似たステルス機と、それに随伴するドローンの両方が、最高速度マッハ6の中国の空対空ミサイルによって撃墜された」としている。

この結果は、中国の航空宇宙学者のチームにより、査読つき学術誌『Acta Aeronautica et Astronautica Sinica』で発表された。中国のミサイル技術の進歩のほか、急速に進化する将来の空中戦についても詳述している。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは同論文を引用しつつ、以下のように伝えている。「中国の極音速ミサイルは、ステルス機を追跡し、破壊する特殊な機能を搭載している。飛行中に出力を自在に調整できる新型の固体燃料パルスエンジンを用いたこのミサイルは、まず宇宙空間の近くまで上昇してから、高速で敵機まで下降することができる」

1950年代中国のロケット開発計画の父と呼ばれる人物の名にちなんで「銭学森軌道」と呼ばれるその軌道は、従来のミサイル軌道よりも長い距離を飛ぶことから、米軍の予測を難しくする可能性がある、と同紙は述べている。

「戦闘シミュレーションでは、中国のミサイルは、発射後すぐに急旋回することができた。これにより、以前なら実現不可能と考えられていた攻撃パターンを、AIが提案できるようになる」という。前述論文の共同著者は、この成果は、中国がB-21に対抗的できる新技術の開発を「余儀なくされた」結果だと述べている。

中国政府は、人民解放軍のステルス爆撃機計画についてはかたく口を閉ざしている。

(翻訳:ガリレオ)

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中