最新記事

航空戦力

ロシア軍機の墜落、5機に1機は「自損」と判明(本誌調べ)

Revealed: One in Five of Russian Air Force Losses During War Self-Inflicted

2023年8月24日(木)19時28分
エリー・クック

高度な飛行技術を誇るロシア空軍のはずが(写真は2021年7月モスクワ郊外、スホーイSu35S戦闘機のアクロバット飛行) REUTERS/Tatyana Makeyeva

<ロシアが誇る航空戦力が使い物にならない実態が明らかに>

ウクライナ侵攻開始後のこの1年半に破壊が確認されたロシア空軍の有人機とヘリコプターのうち、5機に1機以上は「自損事故」で墜落していたことが、本誌が集計したデータで分かった。

<動画>ロシア軍機の悲惨な墜落映像3選

ロシア軍が国境を越えてウクライナに侵入した2022年2月24日〜2023年8月17日までに、ジェット機、ヘリ、輸送機などロシア軍の有人機の確認された墜落件数の21.7%は、操縦ミス、友軍の攻撃、ウクライナ侵攻に直接関係のない事故など、ロシア空軍の組織的な機能不全に起因するものだった。

ロシア軍機が訓練中など自軍のミスで墜落する確率が際立って高いのはなぜか。専門家によれば、いくつかの複合的な要因が絡んでいる。不十分な点検・整備、パイロットの訓練不足、安全対策の不備など、運用に問題があることは言うまでもないが、それだけではない。

本誌は公開情報分析(OSINT)サイトのOryxで墜落が確認されたロシア軍機の数を確認。それとは別に、自軍のミスで墜落した軍用機の数(Oryxのリストにないものも含まれる)をロシア政府の発表と地元メディアの報道を突き合わせて独自に集計した。

スホーイやミグ、攻撃ヘリのアリゲーターも

Oryxのデータによれば、侵攻開始から8月17日までにロシア軍は有人機とヘリ186機を失ったことが確認されている。うち13機は「非戦闘時」の墜落によるものだ。これに対し本誌が突き止め、メディアの報道で確認した、戦闘以外の理由で失われたロシア軍機は8月17日時点で少なくとも48機に上る。その中にはスホーイSu25戦闘攻撃機7機、ミグ31超音速迎撃機4機、ロシアが誇るKa52偵察攻撃ヘリ「アリゲーター」3機が含まれる。

この48機には、ウクライナ軍が撃墜した有人機とヘリは含まれない。

Oryxのデータでは、この1年半の戦闘で、画像などで視覚的に墜落が確認されたロシア軍機は、戦闘機78機、戦略爆撃機2機、空中指揮管制機2機、輸送機2機、それにヘリが102機で、合計186機に上る。これに加え、本誌の独自調査で有人機17機、ヘリ18機の墜落が確認されたため、ロシア軍は少なくとも221機を失ったとみていい。

ウクライナ軍の公式発表では、この数字はもっと多い。8月17日時点でロシア軍は有人機315機、軍用ヘリ314機を失ったとされているが、本誌はこれを確認できなかったため、Oryxと独自のデータに基づいて敵の攻撃以外の理由で墜落したロシア軍機の割合を算出した。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、固体電池研究に8.3億ドル超投資 6社が支援

ビジネス

訂正-バーゼル3、米次第でEUは一部実施遅らせるべ

ワールド

アングル:中朝の蜜月、「非核化」巡り隙間風 ちらつ

ワールド

焦点:中国、アフリカで経済活動再び活発化 一方的関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中