最新記事
テロ

武装集団の州知事ら9人殺害事件、背景に政敵の存在? 地方政府関係者暗殺続くフィリピン

2023年3月6日(月)17時05分
大塚智彦
武装集団による襲撃

監視カメラが捉えた武装集団による襲撃の瞬間 ABS-CBN News / YouTube

<邪魔者は消せとばかりの暗殺行為が行われている>

フィリピンの中部ビサヤ地方東ネグロス州で3月4日、自宅玄関で接客中の州知事が武装集団に襲撃され、ロエル・デモガ知事を含む9人が殺害され、13人が負傷する事件が起きた。

比国家警察は4日夜までに犯行グループの3人を逮捕したが、なかには陸軍特殊部隊の元兵士らが含まれていた。

事件を重視したマルコス大統領は直ちに犯行グループ全員の逮捕と真相解明を国家警察に対して厳命した。

またマルコス大統領の姉であるエイミー・マルコス上院議員は知事暗殺事件が起きた東ネグロス州に非常事態を宣言するべきだとの考えを示すなど現地の治安悪化への迅速な対応を求めた。

フィリピンでは最近地方政府関係者の殺害や襲撃事件が増加、今回の事件を含めて1カ月間に4人が死傷する事態となっており、特に地方での治安悪化が深刻な社会問題となっている。

訪問客応対中の知事を突然銃撃

東ネグロス州のロエル・デモガ州知事(56)は3月4日午前9時半ごろ、同州パンプローナ市サンイシドロにある自宅玄関で訪問客に応対していたところ、迷彩服に防弾チョッキ姿で武装した正体不明の集団が敷地内に突然侵入してきた。

武装集団による無差別銃撃が始まり、デモガ知事は銃弾を受けて直ちに付近の病院に搬送されたが同日午前11時過ぎに死亡が確認された。

また知事と一緒にいた地区の長や運転手、ボディガード、民間人ら8人も銃撃で殺害されたほか13人が負傷。このなかには州の保健官や陸軍兵士、民間人が含まれていたという。

地元警察は国家警察、陸軍とともに事件後直ちに特別対策本部を立ち上げて犯行グループの特定と車2台で現場から逃走した実行犯の行方を追った。

その結果同日午後4時過ぎ、知事の自宅から約10キロ離れたバヤワン市の山中で逃走に使われた車2台が乗り捨てられているのを発見。犯人はそこから徒歩で逃げたとみて追跡して容疑者3人を逮捕することに成功したと警察は明らかにしている。

また同日午後9時過ぎには別の容疑者1人を同じバヤワン市のカンスマリグで発見したものの、警察と銃撃戦となりその結果死亡した。死亡した容疑者の身元は不明で現在調査中という。

地元警察によると逮捕された3人の容疑者はジョリック・ラブラドール容疑者(50)、ジョベン・アベール容疑者(42)、ベンジー・ロドリゲス容疑者(45)で、いずれも陸軍の元兵士でアベール容疑者は陸軍特殊部隊所属だったという。

地元警察は3容疑者の逮捕と同時に拳銃や自動小銃、グレネードランチャー、弾倉など多数の銃器を発見、押収した。

国家警察では犯行グループメンバーは少なくとも10人いるとみて残る犯人の逮捕に全力を挙げている。

犯行の背景に知事選のもつれ関与か

これまでの捜査で浮かび上がっている犯行動機は2022年5月に実施された同州知事選と関係があるとみられている。

この選挙では殺害されたデモガ知事は次点となり、ヘンリー・テベス氏が当選して知事に就任した。しかしデモガ氏は「名前が自分と酷似した泡沫候補に得票が流れた」と中央選挙管理委員会に訴えた。同年10月に中央選管はデモガ氏の訴えを認めてテベス知事に代わってデモガ氏が知事に就任した経緯がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル

ビジネス

トランプ氏、7日にも中国とTikTok米国事業の売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中