最新記事

犯罪捜査

父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴え...その驚愕の真相に迫る

FIELD OF NIGHTMARES?

2022年11月26日(土)19時32分
エリク・ファーケンホフ、ナビード・ジャマリ(いずれも本誌記者)

221129p40_RSA_02.jpg

ドナルドと4人の子供たち。一番左がルーシー、3人目が姉のスーザン COURTESY OF LUCY STUDEY

ステュディーによれば、ドナルドは短気で、しょっちゅう酔っぱらっていた。殺害の際には刃物で刺すことも銃で撃つこともあったが、女性の頭を殴ったり蹴ったりするほうを好んだ。それも、3人の娘と1人の息子と一緒に暮らしていたトレーラーハウスの中で。

トレーラーハウスはその後、火事で焼け落ちた。ステュディーは父親が火を付けたと信じている。

ステュディーは何年もの間、学校の教師や聖職者、それに「アイオワ州やネブラスカ州のあちこちの警察や保安官事務所に(事情を)話して、何とかしてもらおうとした」と語る。過酷な生育環境と、遺体遺棄を手伝わされたことによるトラウマは、真実が語られない限り消えることはないと、彼女は言う。事件があったとされる当時、彼女はまだ10歳前後だった。

警察は「子供の記憶は当てにならない」

「誰も私の言うことに耳を傾けてくれなかった。先生からは、家族の問題は家族で対処すべきだと言われ、警察からは子供の記憶は当てにならないと言われた。私はまだ子供だったけれど、何もかも覚えているのに」

「父は生きている間ずっと、犯罪者で殺人者だった」と、ステュディーは言う。ドナルドはいくつもの偽名を使い、ドラッグや銃の売買を行っていた。「商品」を木のうろに隠し、州境を越えてそれを運んだ。

本誌が入手した警察の記録によれば、ドナルドは1950年代に軽窃盗罪で、89年には飲酒運転で投獄されていた。アイストロープによれば、警察とのトラブルもしょっちゅうだった。警察は彼を警戒し、一家のトレーラーハウスを訪ねるときは必ず2台以上の車で向かったと言う。

ドナルドは「馬でも犬でも100頭いるうちから必ず外れの1頭を選んでしまう」ようなギャンブラーで、常に借金を背負っていたと、ステュディーは言う。修理工や運転手の仕事をしたこともあったが、職場で盗みを働くことがしばしばだった。

ステュディーによれば、ドナルドは2度結婚したが、いずれの妻とも死別した。ドナルド自身が自殺を図ったことも少なくとも2回あるという。警察の記録によれば、妻の1人はひもで首をくくって死に、もう1人は自分で頭を撃ったという。さらにもう1人、交際相手がいたが、この女性は自然死だった。

ドナルドが敷地内の農地を耕したことはあるかと聞くと、ステュディーはこう答えた。「父はぐうたらすぎて、耕作なんてできなかった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中