最新記事

犯罪捜査

父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴え...その驚愕の真相に迫る

FIELD OF NIGHTMARES?

2022年11月26日(土)19時32分
エリク・ファーケンホフ、ナビード・ジャマリ(いずれも本誌記者)

221129p40_RSA_03.jpg

犬の訓練士のピーターズ、ルーシー、アイストロープ保安官 NAVEED JAMALI/NEWSWEEK

探知犬は2頭とも、遺体を遺棄したとステュディーが話していた場所に一目散に走って行った。訓練士のジム・ピーターズが誘導したわけではない。臭いに引かれたようだった。ピーターズは探知犬サービス会社の経営者で、この捜索にはボランティアで参加した。

1頭の犬は遺体の在りかを知らせるようにほえ、もう1頭は遺体があるとおぼしき場所にじっととどまった。犬たちは遺体の存在を嗅ぎつけたようだと、ピーターズは話した。「だが確認するには掘って調べないと......犬の様子から可能性は高いと思うが、断定はできない」

犯罪捜査や法医学の専門家の間では、遺体捜しに探知犬を使うことを疑問視する向きもある。有効性を調べた論文は複数あるが、結論はまちまちだ。的確に探知できるかは、死後の経過時間、土壌の組成、湿度にも左右されるし、個々の犬の能力や訓練方法、扱い方でも違ってくる。

「あそこに人骨があることは疑う余地がない」と、アイストロープは言う。「2頭の犬が同じ場所を示して、どちらも間違っているなんてことはあり得ない。ただ、誰の骨かは分からない。この辺りには入植者や先住民がいたこともある。ルーシーの話は本当だと思うが、今はまだ人骨のかけらも出ていない」

掘って調べるには多くの費用と時間がかかる。ドナルドが所有していた土地は2ヘクタールほどだが、隣接する山や農地は170ヘクタールにも及ぶからだ。

被害者たちの歯の金冠は「戦利品」

考えられる次の手は、引き続き探知犬を使って捜索を行い、反応があった地点をマッピングすること。可能なら地中探査レーダーで埋設物を調べる。掘削を行うのはその後だと、ピーターズと捜査員らは言う。長らく放置されていた井戸も調べ、骨がありそうなら掘り返すことになる。そうした作業をいつ始めるかは、今のところめどが立っていない。

ステュディーの話では、多くの被害者は着衣の状態でアクセサリーも身に着けたまま遺棄された。ドナルドは被害者の歯にかぶせてあった金冠を溶かして売るつもりで、戦利品のように箱に収めていたそうだ。

「遺体を全て掘り出して、きちんと埋葬し、遺族が心の区切りをつけられるようにしたい。私が望むのはそれだけ」と、ステュディーは言う。遺棄した場所には臭いを隠すために灰汁がまかれたが、そのおかげで遺体の分解はさほど進んでいないはずだと、彼女は言う。

がっしりした体格にショートヘアのステュディーは早口で、現場でもほとんど感情を見せなかった。自分は「冷たくて他人に無関心な人間」なのだと、彼女は言った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中