最新記事

動物

猿のアイアイの鼻ほじり、長い指を喉の奥まで突っ込んでいた

2022年11月22日(火)16時30分
松岡由希子

アイアイが鼻ほじりする様子が初めてとらえられた...... (C)Anne-Claire Fabre / Renaud Boistel

<細長い指を持つことからユビザル(指猿)とも呼ばれアイアイが鼻ほじりする姿がはじめて撮影された......>

アイアイはキツネザルに近縁で、世界最大の夜行性霊長類だ。細長い指を持つことからユビザル(指猿)とも呼ばれ、特に中指は細長く、鉤爪がある。この中指は採餌のための高度な専門性を持ち、木の表面を叩いて反響音を発生させ、内部にいる幼虫の場所を見つけ出し、穴をあけて餌となる幼虫を器用に取り出す。

しかし、アイアイが中指を使うのは採餌のみにとどまらないようだ。このほど、アイアイが中指で鼻ほじりする姿が初めてとらえられた。一連の研究成果は2022年10月26日付の学術雑誌「ジャーナル・オブ・ズーロジー」で発表されている。

中指は喉の奥まで届くことがわかった

スイス・ベルン大学のアンヌ-クレール・ファーブル准教授らの研究チームは、米ノースカロライナ州のデューク大学キツネザルセンターで飼育されているメスのアイアイ「カリ」の夜間の行動をローライトのデジタルビデオカメラで撮影した。すると、中指を鼻の奥まで入れ、鼻くそをほじり出し、その指をきれいになめている様子が何度もとらえられた。

研究チームはこの行動を詳しく解明するべく、アメリカ自然史博物館が所蔵するアイアイの標本の頭蓋骨と手をCTスキャンし、鼻腔内の中指の位置を復元した。その結果、中指は喉の奥まで届くことがわかった。

研究チームの調査によると、これまでにヒト、チンパンジー、オランウータンなど、少なくとも12種の霊長類で鼻ほじりが確認されている。いずれも運動能力が高く、その多くは道具を巧みに操って利用する能力を持つ。

63Aye_ayes_pick_out_bogey.jpg

霊長類がなぜ鼻ほじりをするのかわかっていない

しかし、ヒトやその他の霊長類がなぜ鼻ほじりをするのか、その理由はまだ十分に解明されていない。研究論文では「霊長類の他の分類群や脊椎動物全般にわたる鼻ほじりの比較研究によって、その起源や機能、進化についてさらなる洞察が得られ、医学的にも興味深い視点がもたらされるかもしれない」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平合意「極めて近い」 詳細

ワールド

中国の米国産大豆の購入は「予定通り」─米財務長官=

ワールド

ハセットNEC委員長、次期FRB議長の最有力候補に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中