最新記事

国際協力

草の根技術協力が結実! ペルーのスーパーフードから生まれたサッポロビール「インカの扉」の秘密

2022年10月31日(月)12時40分
※JICAトピックスより転載
サッポロビール「インカの扉」

<現地ペルーですら忘れられた存在となっていった「サチャインチ」。日本のNPO、JICAの草の根技術協力、そして保存食研究家――。10月18日、彼らのまいた種が意外なところで実を結んだ>

NGOや大学、民間企業等が提案する国際協力活動を、JICAとの協力関係のもとに実施する「草の根技術協力事業」。今年12月に20周年を迎えます。この節目を目前に、ひとつの取り組みが実を結んで世に送り出されました。10月18日、サッポロビールから発売された「HOPPIN' GARAGE(ホッピンガレージ)インカの扉」。南米で古くから愛されるサチャインチというナッツの搾りかすを使用した発泡酒です。どのような経緯で発売に至ったのでしょうか。誕生までのストーリーに迫りました。

高栄養価、高生産性の「ペルーの宝物」サチャインチとの出会い

「サチャインチはペルーの宝物。健康や美容に良い成分を豊富に含む『スーパーフード』です」

そう話すのは、NPOアルコイリス代表理事の大橋則久さん。2008年から2017年の間に3回にわたって、ペルーでJICAとの草の根技術協力事業を実施しました。自然環境の保全と農業を両立させたアグロフォレストリー農法でサチャインチを栽培。サチャインチの種子から取れるオイルの製造を通して、現地の人々の生計向上をはじめとしたQOL(Quality of Life、生活の質)の改善に取り組んできました。

jicatopics20221031-2.jpg

大橋則久さん

大橋さんがサチャインチの魅力に引き込まれたのは、2005年のこと。サチャインチに注目し研究を進めていたペルー人実業家のホセ・アナヤさんと出会ったことがきっかけでした。

「サチャインチは、1542年以前のプレ・コロニアル時代から栽培されていた植物です。私が渡航した当時のペルーでは、すでに知る人ぞ知る忘れ去られた存在になっていましたが、とても魅力的な作物だと思いました。オメガ3脂肪酸やビタミンEが豊富な良質な油がとれるうえに、その搾りかすにもタンパク質が豊富に含まれます。しかも、種を撒いて8〜10ヵ月後には毎月のように収穫でき、生産性も高いのです。商品化、産業化したいと思いました」

jicatopics20221031-3.jpg

収穫前のサチャインチの実

jicatopics20221031-4.jpg

乾燥させたサチャインチの実。右は取り出した種子

「JICAの草の根技術協力」で、「按田餃子」店主にプロジェクト参加を依頼

ただ、サチャインチの栽培方法についての情報がほとんどなく、サチャインチの製品開発のためには費用も専門知識も必要でした。そこで、大橋さんはJICAの草の根技術協力事業に申請。「サチャインチを、アグロフォレストリーという持続可能性の高い方法で栽培して商品化を模索するには、開発要素が大きく、専門家のプロジェクトへの参画が必須でした。そうした素地を整える上でも、JICAさんの力を借りられたことは非常に大きかったのです」

jicatopics20221031-5.jpg

大橋さんがアグロフォレストリーで栽培するサチャインチ

第2回の事業を終えたころは、すでにサチャインチオイルの製造を始めており、その販売も軌道に乗り始めていました。ただ、搾油したあとに残る、タンパク質を豊富に含む搾りかすの活用が課題になっていました。そこで大橋さんは、3回目の草の根技術協力事業(2012年6月〜2017年5月)において、保存食研究家で「按田餃子」店主の按田優子さんに食品加工専門家としての参加を依頼。搾りかすを使用したレシピの考案を含め、現地の人々のQOLの向上に関わる業務を要請します。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ゴールドマン、1─3月は債券低迷 利益予想超えも

ビジネス

米中古住宅販売、3月は3.6%減 在庫不足で9カ月

ワールド

トランプ氏、イランは合意望む 米のホルムズ海峡封鎖

ワールド

英仏、 米国のホルムズ封鎖に不参加 多国間枠組み策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    トランプ政権に逆風...「イラン戦争でインフレ再燃」…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中