最新記事

日本社会

他人の悲しみや苦痛を美談化し、使い捨てするメディアへ【エモを消費する危うさ:後編】

2022年10月18日(火)08時01分
ヒオカ(ライター)
若者

SetsukoN-iStock

<「有害なポジティブさ」とは何か? 「使い捨て」を供給するメディアと、それを消費する読者たちの共犯関係。いま、話題の論客が言葉の力について思うこととは>

※第1回:貧困に生まれ「いじめ」に苦しんだ私を外の世界に連れ出してくれた作文【エモを消費する危うさ:前編】より続く

アマゾンで買った「中古1円」の参考書で独学し、苦学の末に大学へ進学。社会に出てからは奨学金を返済しながら発信を続けている20代の論客がいる。社会で「無いもの」とされる存在に光を当てる、ライターのヒオカ氏だ。

【関連記事】貧困について書くと悪辣なDMが大量に届く この日本社会で

制服が買えなかったこと。習い事や塾に通えなかったこと。大学でレポートを書くためのパソコンが買えなかったこと......。そうした経験から「あなたのすぐそばにいるかもしれない誰かの痛みに目を向けよう、みんなで社会を生きやすくしよう」と前向きに呼びかけている。

居場所がなかった中学時代。言葉で思考を整理し、表現することで救われたというヒオカ氏が、SNS全盛のいま、言葉について思うこと。そして、メディアとその読者について思うこととは? 今話題の初著書『死にそうだけど生きてます』(CCCメディアハウス)より抜粋する。

◇ ◇ ◇

仕事柄というより、もともとの習慣で、毎日大量のネット記事を読んでいる。しかし、たいていこの作業のあとはいつも疲弊する。ネット空間にはセンセーショナリズム(扇情主義)が溢れているからだ。

報道の大義として、あらゆる「現実」を伝えることは公益性を帯びるものだ。しかし、明らかに故意に、大衆のグロ・ポルノ消費欲を煽るものがあまりに多い。文章は、書く人の人柄、目的、指向などを色濃く反映する。そしてタイトルや見出しには、編集する人の意図が組み込まれる。
  
公益に資するという純粋な動機とはかけ離れ、いかにセンセーショナルに、悲惨に、大げさに、エキセントリックに見せるか。そうした部分を抽出し、盛り立てるか。意図が透けて見える。

メディアのセンセーショナリズムは常に批判の対象となる。一方で、これは読者との共犯関係でもある。

人間はグロいものに惹かれる。悲惨なものを、無意識に半ばエンターテイメントとして消費する。センセーショナリズムはPVを稼ぐには有効だ。しかし、「問題」を「問題」として伝えようとする時、障害になり得る。

死にそうだけど生きてます
 ヒオカ 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン、核協議の議題や開催地巡り溝 実現に不透明

ワールド

再送米政権、ミネソタ州派遣の移民職員700人削減へ

ワールド

米財務長官、強いドル政策支持再表明 FRBは国民の

ワールド

EXCLUSIVE-ロ原油収入減で財政悪化懸念、2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 8
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 9
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中