最新記事

気候変動

長引く干ばつに人工降雨で対抗する中国

China Has Started Geoengineering Rain Over Extreme Heat and Drought

2022年8月25日(木)17時17分
ジェス・トムソン

長江南岸の八陽湖の堤防を歩く人物(8月24日) Thomas Peter-REUTERS

<世界を襲ったこの夏の異常な熱波で、地球を冷やす最終手段ジオエンジニアリングがますます現実味を帯びる>

この夏記録的な猛暑に見舞われている中国では、長引く干ばつの影響を緩和するため、地方自治体が人工的に雨を降らせる計画を検討している。

中国の中部と南部を流れる長江は一部で川底が露出するほど水位が低下。流域では電力不足で工場が操業停止に追い込まれ、秋の収穫を控えて作物への影響も懸念されている。

自治体が使用を検討しているのは、雲の中に飛行機を飛ばして、ヨウ化銀を散布し、雨を降らせる技術だ。地球温暖化の進行に伴い、今後はジオエンジニアリングと呼ばれる、こうした大規模な工学的手法で猛暑や干ばつに対処する必要性が出てくると科学者たちはみている。

「気候危機は今や(エアコンの使用制限や都市の緑化など)手軽な解決策で対処できる段階ではなくなりつつある。将来の政策決定者にできる限り信頼性の高い情報を提供するためには、ジオエンジニアリング技術の使用に伴うリスクと、使用を控えるリスクを比較検討しなければならない」と、コーネル大学シブリー機械・航空宇宙工学大学院の上級研究フェロー、ダグ・マクマーティンは言う。人工降雨と共に気候変動対策として期待されるソーラージオエンジニアリングでも同様だ。

【動画】川底を露出させた長江

深刻な穀物不足も

ヨウ化銀を使って人工的に雨を降らせる技術は、クラウドシーディング(雲のタネまき)と呼ばれるように、雲の中に雨粒のタネとなるヨウ化銀をばらまき、周囲の小さな水の粒を集めて大きな雨粒に成長させ、雨を降らせるというものだ。

ネバダ州の非営利の研究機関・砂漠研究所によると、ヨウ化銀は微量ながら環境中に自然に存在している。

ヨウ化銀の散布によりスキー場など特定の場所で降雪・降雨量が15%前後増えたとの報告もあるが、干ばつ対策としての効果は確認されていない。

この夏は中国に限らず、世界中の多くの地域が長引く干ばつに悲鳴を上げている。アメリカでは8月中旬段階で、全土のおよそ41.23%の地域が干ばつの影響を受けている。

観測史上最悪の熱波に見舞われた中国では、長江の一部が干上がり、当局が秋の収穫に「深刻な脅威」をもたらすと警告を発し、流域の自治体に節水を要請する事態となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米独首脳が会談、イラン紛争や貿易巡り協議 ウクライ

ワールド

イラン中部ナタンズ核施設、攻撃で損傷も放射能漏れな

ワールド

ゼレンスキー氏、湾岸アラブ2カ国首脳と電話会談 防

ワールド

トランプ氏、スペインと全取引停止へ イラン攻撃で基
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 6
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中