最新記事

宇宙望遠鏡

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の生データをアマチュア研究者が処理した画像が圧倒的

2022年7月25日(月)18時08分
松岡由希子

NGC 628. (Judy Schmidt/Flickr, CC BY 2.0)

<「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」が観測した生データを多くのアマチュア研究者が詳しく分析し、新たな発見につなげようとしている......>

2021年12月に打ち上げられた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」が観測した宇宙のフルカラー画像と分光データが2022年7月12日、初めて公開された。多くのアマチュア研究者たちはその生データを詳しく分析し、新たな発見につなげようとしている。

長年、宇宙の生データを処理し、驚異的な天体の画像を制作してきたジュディ・シュミット氏もその一人だ。このほど「NGC 628(M74)」と「NGC7496」の画像をツイッターと画像共有サイト「フリッカー」で相次いで公開した。いずれの天体も天の川銀河に比較的近く、近傍銀河の観測プロジェクト「PHANGS」の一環として現在も観測が続けられている。

ハッブルとジェイムズ・ウェッブで補完しあえる

地球から3200万光年離れたうお座にある渦巻銀河「NGC 628」は、はっきりとした形のよい渦状腕を持つ。この渦状腕には星を形成するガスが豊富に存在するとみられ、2000年以降、少なくとも3つの超新星が観測されている。

地球から2400万光年離れたつる座にある「NGC 7496」は、中心に棒状の構造が存在する「棒渦巻銀河」だ。銀河円盤の密度が不均一であるため、密度の高い領域が星を引き寄せ、棒状になったと考えられている。中心に向かってガスが内側に流れ込むことから、この棒は星形成が盛んな領域だとみられ、星がどのように生まれるのかを研究するうえで適した場となっている。

1990年に打ち上げられた「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」は可視光線と紫外線で観測する一方、その後継機である「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は赤外線で観測するため、それぞれの観測を補完し合えるという利点がある。「ハッブル宇宙望遠鏡」がガスをとらえ、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」がその内部の生まれたての星を観測できるわけだ。

小隕石と衝突し、修正不能な損傷を受けた......

「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は宇宙空間でおよそ月1回の頻度で微小隕石と遭遇している。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」からのフルカラー画像を初公開した同日、「『ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』の主鏡を構成する18枚の鏡のうちの1枚が2022年5月22~24日に微小隕石と衝突し、修正不能な損傷を受けた」との報告書も公表した。幸い、その影響はごく一部にしか及ばず、望遠鏡全体への影響は軽微だという。

【画像】>>■■アマチュア研究者が生データを処理した渦巻銀河の画像に圧倒される■■

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送仏政権崩壊の可能性、再び総選挙との声 IMF介

ビジネス

エヌビディア株、決算発表後に6%変動の見込み=オプ

ビジネス

ドイツとカナダ、重要鉱物で協力強化

ワールド

ドイツ、パレスチナ国家承認構想に参加せず=メルツ首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 9
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 9
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中