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見過ごされている「無園児」と育児ストレスの関係

2022年7月20日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

こうした乳幼児の存在に各自治体は無関心でいられないが、無園児の出現率には地域差がある。<表1>は1歳児、3歳児、5歳児の無園児割合を都道府県別に出し、上位10と下位10を示したものだ。

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幼稚園や保育園に通っていない子の割合は、地域によって大きく異なる。傾向としては保育園が不足している都市部で高く、東京では3歳の39.4%、5歳でも27.5%が無園児だ。ちなみに47都道府県の無園児率は、児童虐待の相談件数(0~5歳人口当たり)と有意なプラスの相関関係にある。因果関係とは限らないが、自宅育児のストレスとの関連も疑っていい。

地方では保育所に空きが出ていると聞く。こういう地域では、保育所の利用要件を緩和し、希望する全ての家庭に門戸を開いたらどうか。週に何日か時短で預かる、育児相談に応じるなど、利用形態に幅を持たせるのもいい。これを売りにして子育て年代を呼び込めば、都市から地方への人口移動も促される。

最近、少年鑑別所が青少年の問題行動の相談を請け負っているという。入所者減少により、余力が出てきているためだ。こういうリソースを洗い出し、足りない部分に振り向ける。従前の縦割りを脱し、子ども関連の政策を一元的に担う「こども家庭庁」が創設されたが、この組織に期待される役割はリソースの調整と再配分だ。

<資料:総務省『国勢調査』(2020年)

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