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ウクライナ・ゼレンスキーの演説を支える「38歳スピーチライター」のスゴさ

2022年5月14日(土)16時10分
大門小百合(だいもん・さゆり) *PRESIDENT Onlineからの転載

アメリカ人が大切にしている言葉は、独立宣言や聖書に使われているものが多い。ゼレンスキー大統領がアメリカ議会の演説で使った「democracy(民主主義)」「独立(independence)」「freedom(自由)」も、独立宣言で印象的に使われる言葉だ。

独立宣言には「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と書かれている。ゼレンスキー大統領は、その心をよく理解していたに違いない。

「攻撃された記憶」で共感を呼ぶ

「私は、あなた方のラシュモア山国立記念碑にある著名な大統領の顔を覚えています。民主主義、独立、自由、そして勤勉に働き、正直に生き、法律を尊重するすべての人を大切にする、今日のアメリカの基礎を築いた人々の顔です」

ロシアのウクライナへの侵攻は、「私たちの自由、自国で自由に暮らす権利、未来を自分たちで選択すること、幸せを望むことに対する攻撃なのです、そしてこれは、あなた方アメリカ人が求めている夢と同じ、国家の夢への攻撃なのです」と語りかける。

さらに、この演説には、有名なマーティン・ルーサー・キング牧師の「I have a dream(私には夢がある)」と同じ手法も使われた。ゼレンスキー大統領は、「I have a dream」の代わりに、「I have a need.(私には必要なものがあります)」と訴えた。

「私には必要なものがあります。私は私たちの空を守る必要があるのです。あなたの決断と助けが必要なのです」

ゼレンスキー大統領は、歴史的な記憶を思い起こさせて、アメリカ人の心に訴えかけることにも成功した。真珠湾攻撃と911(アメリカ同時多発テロ)だ。

「真珠湾攻撃、1941年12月7日の恐ろしい朝、飛行機の攻撃で空が真っ黒になったことを思い出してください。9月11日を思い出してください。2001年の恐ろしい日、悪があなたの都市、独立した領土を戦場に変えようとしたとき、罪のない人々が、空から攻撃されたのです」

今でもアメリカ人の心には、真珠湾攻撃の記憶が心に深く刻まれている。2016年、当時のオバマ大統領が広島の平和記念公園を訪問し慰霊碑に献花したが、当時日本の政府内には、この訪問に消極意見もあった。もし、オバマ大統領が広島を訪問したら、当時の安倍首相が真珠湾訪問を求められるのではないかとの懸念があったからだという。

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