最新記事

ドローン

ウクライナで中国DJI社製ドローン分析製品が、ロシアによるミサイル誘導に使われている

2022年3月29日(火)12時00分
青葉やまと

DJI社は、治安当局などに限ってAeroScopeを販売していると説明している。一台数百万円前後からと高価なこともあり一般ユーザー向けではないが、一部には富豪が入手して自宅周辺の警備に利用しているとの情報がある。

ロシア側がAeroScope製品を入手すれば、ウクライナ軍と有志協力部隊が共同して飛ばしている偵察用ドローンの位置を一挙に取得することが可能だ。

フョードロフ氏は同社に宛てた文書のなかで、「ロシア軍はシリアを通じて入手したDJI AeroScopeの機能拡張版を利用している」と指摘。パイロットの位置を特定して攻撃するなどが可能であり、「状況は極めて危機的だ」と述べた。

Video shows risk of flying a DJI drone in Ukraine right now


そのうえでDJI社に対し、「ロシア連邦、シリア、またはレバノンで購入と初期設定がなされた、すべてのDJI製品をブロックする(使用不能にする)」よう求めている。これに対しDJI社は、AeroScope機能については技術的に「オフにすることができない」とし、要求を断った。

国際企業としての采配問われる

欧米諸国にも熱烈なユーザーを抱えながら、ロシアと繋がりの深い中国に本拠を置く同社にとって、難しい舵取りが続く。フョードロフ氏はまた、DJI社にロシアでの全ビジネスを停止するよう求めている。

英フィナンシャル・タイムズ紙は「西洋の多くのテクノロジー企業がこのような(ウクライナ政府による)嘆願に積極的に応じている」のに対し、ドローン業界首位のDJIは要求を「毅然とはねつけた」と指摘する。

ただしDJI社は、「望まれるのでしたら、この問題に関する協議を続けることも可能です」と述べ、妥協点を探る姿勢をみせている。

ある業界筋はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、「同社は政治に巻き込まれたくないのだ」と述べ、技術企業として難しい立場に立たされたとの認識を示した。趣味用途として販売していたドローンが戦地で想定外に利用されている事態を受け、ドローンメーカーとしての対応が問われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国首相、消費促進と住宅市場の安定を強調 経済成長

ワールド

トランプ氏「米にとり栄誉」、ウクライナ・欧州首脳ら

ワールド

ロシア、ウクライナに大規模攻撃 ゼレンスキー氏「示

ワールド

郵送投票排除、トランプ氏が大統領令署名へ 来年の中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中