最新記事

ドローン

ウクライナで中国DJI社製ドローン分析製品が、ロシアによるミサイル誘導に使われている

2022年3月29日(火)12時00分
青葉やまと

中国DJI社製ドローン使用が、ロシアの攻撃を誘導する...... YouTube

<ウクライナ副首相のツイートに、ドローン最大手の中国DJI社が反応。技術的に可能な範囲で協力を打診したが、実効性には疑念も残る>

ウクライナのフョードロフ副首相はTwitter上で、ドローン最大手の中国DJI社を名指しし、ロシア軍がミサイルの誘導に同社のドローン分析製品「AeroScope」を使っていると指摘した。


フョードロフ氏は「彼ら(ロシア軍)はミサイルを誘導するためにDJIの製品を使用している」と述べ、「@DJIGloba、あなたはこうした殺人行為の共犯者となりたいのですか?」と強く批判した。

続いて氏は、ロシアとの取引を停止し、ウクライナ領内で活動中のドローン情報を提供するほか、外国で購入されウクライナで使用されているあらゆるDJI製品を使用不能にするよう求めている。

DJIは代替案を打診

DJIは翌日、ドローンを含む同社製品を使用停止にせよとの要求部分に対しては、同社側では個別のドローンを飛行不可能にする機能を用意していないと回答した。そのうえで代替案として、「ジオフェンス」機能をウクライナ全土に適用すれば、実質的にすべてのDJI製ドローンを飛行禁止にすることはできると説明している。

同社はまた、必要であればウクライナ政府として正式に要請するよう求めた。ロシアとの深いパイプが指摘される中国に本社を置く企業としては、相当に前向きな回答となっている。

ただし、技術的制約から、高い実効性は期待できない可能性がある。ウクライナ全土にジオフェンスを適用した場合、ウクライナ側のドローンもすべて飛行不能となるためだ。ウクライナでは軍とドローン所有者有志が協力し、ロシア軍の動向をドローン部隊で監視しているが、これが機能しなくなることを意味する。また、ジオフェンス機能の更新にはネット接続が必須となるが、どれほどのオーナーが更新に応じるかは不透明だ。

ジオフェンスは本来、空港や原子力設備など重要施設周辺を局所的に飛行禁止にするための機能だ。同社の提案はこれをウクライナ全土に拡大して適用し、同社製ドローンを全面的に飛行不能にする内容となる。

パイロットの位置を一挙取得 AeroScope機能に懸念

パイロットの位置を収集しミサイルの誘導に使われているとウクライナ側が指摘する「AeroScope」製品については、無効化する手段はないとDJI社は回答している。

DJI社は、一般のドローンユーザーを念頭に置いた安全対策として、2017年以降に出荷されたすべての同社製ドローンに飛行データの自動送信機能を付与している。ドローンの位置と速度などの飛行データと、シリアル番号およびパイロットの位置が全方位に向けて送出され、この機能はドローンが飛行している限りはオフにすることができない。

データは暗号化されているため通常は公開されないが、同社が販売するドローン検知システム「AeroScope」を購入したユーザーはこの暗号化を解除し、最大で周囲50キロ圏内のすべての同社製ドローンの飛行データを入手可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国大手銀行、高利回り預金商品を削減 利益率への圧

ワールド

米、非欧州19カ国出身者の全移民申請を一時停止

ワールド

中国の検閲当局、不動産市場の「悲観論」投稿取り締ま

ワールド

豪のSNS年齢制限、ユーチューブも「順守」表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中