最新記事

フランス

無人レジより新しい? 仏の大手スーパーで「おしゃべり奨励レジ」広がる コロナ禍の孤独対策で

2022年2月17日(木)18時30分
モーゲンスタン陽子

このレジで会計を済ませる人たちは、列の後ろに並ぶ人の目を気にせずに、レジ係としばらく世間話をしてもいい...... euronews-YouTube

<長引くパンデミック中の孤独感軽減対策として「おしゃべり奨励レジ」を開設する動きがフランスで広まっている>

フランスでは、カルフールなど大手スーパー各社が、長引くパンデミック中の孤独感軽減対策として「おしゃべりレジ」を開設する動きが広まっている。このレジで会計を済ませる人たちは、列の後ろに並ぶ人の目を気にせずに、レジ係としばらく世間話をしてもいい、という趣旨だ。今年1月から始まったこの動きは全国に広がりを見せ、すでに150の「おしゃべりレジ」が開設されたという。

食料品店は、他人と交流ができる数少ない場所だった

これらのレジには「blabla caisses」のサインが出されている。blablaには「ペチャクチャ、騒がしくする」などの意味がある(英語にもblah blahという表現がある)。ヨーロッパではもともとレジ係と挨拶を交わす習慣があり、常連なら多少の会話もあったが、ロックダウン中「テキパキと買い物を済ます」ことが奨励されていた状態ではそれも憚られるようになった。だが一方で、食料品店はロックダウン中他人と交流ができる数少ない場所でもあった。

最も厳格なロックダウンの時期は過ぎたが、それでも3年目に突入するパンデミックのなか、顧客だけでなくレジ係の精神衛生をも考慮したうえで始められたのが今回の施策だ。後ろの人の目を気にせず世間話に興じることのできる「おしゃべりレジ」は特に高齢者に人気で、さらに顧客だけではなくレジ係にも「商品をゆっくり扱うことができる」との指摘のようだ。

セルフレジ、さらにはレジなしスーパーまで登場している現在、「おしゃべりレジ」は時代に逆行しているように見えるかもしれない。また、ヨーロッパのレジサービスは以前からもたつき気味だったため、「サービスがさらに悪くなる」と懸念する向きもあるようだが、さっさと支払いを済ませたい人は「おしゃべりレジ」を避ければ良いのだから、むしろスピードアップされるのではないだろうか(精算商品点数の少ない人向けの「エクスプレス・レジ」も大手スーパーでは以前から存在している)。

French supermarkets keep spirits high with 'chat-friendly' tills


孤独とどう付き合うか

パンデミックにおける心の健康や孤独との付き合い方は、今や重大なテーマだ。ロックダウン中のフランスでは、絶望した学生の自殺や、バゲット(フランスパン)を持って買い物中のふりをし5時間も外を歩き続けた人が逮捕される、などの事件があった(食料品購入は許可されていた数少ない外出理由の1つだったが、時期によって1日1時間などの時間制限があった)。

ロックダウンを経験していない日本ではいまだに「煩わしい人間関係がなくて楽」「1人が好き」「おうちが好き」などという声も耳にするが、約1年間閉じ込められ、大切な人たちとの時間を奪われ、知的な会話や芸術や身体的活動を禁止されることは、「1人が好き」というレベルの話ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブチャ虐殺から4年、EU外相ら現地訪問 支援再確認

ワールド

中国、EU議員団の8年ぶり訪中を歓迎 関係安定化に

ワールド

イスラエル、レバノン南部に緩衝地帯設置へ 国防相表

ワールド

ゴールドマン、26年末の金価格予想を5400ドルに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 5
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中