最新記事

中国

安倍元首相オンライン演説を台湾はなぜ歓迎しないのか?

2021年12月6日(月)12時39分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

以下に示すのは動画の「14:38(14分38秒)~17:15(17分15秒)」の間のスピーチを筆者が文字起こししたものである。安倍氏の発音は割合に聞き取りにくい。不正確な文字起こしがあった時にはお許し願いたい。


台湾の周辺には、と言いますとこれは、尖閣諸島、先島、与那国島など、日本の領土領海にはと言っても同じことですが、空から、海上、海中から中国はあらゆる種類の軍事的挑発を続けていくことも予測しておかなくてはなりません。

では日本と台湾はどうすべきでしょうか?

台湾が取るべき政策に関して何かを言うつもりはありません。

ここでは一点、自由と民主主義、人権と法の支配という普遍的価値の旗を高く掲げて、世界中の人からよく見えるよう、その旗をはためかせる必要がある、とだけ申し上げます。日本と台湾、ともに進みましょう。

民主主義は、人のこの自発的なコミットメントを求める制度です。上から権力ずくで強制するものではありません。民主主義はだから、強い。私はそう考えます。

次に中国にどう自制を求めるべきか、そこをお話しいたします。

私は総理大臣として、習近平主席に会うたびごとに、尖閣諸島を防衛する日本の意思を見誤らないようにと、言いました。

その意思は確固たるものであると明確に伝えました。

尖閣諸島や、先島、与那国島などは、台湾からものの100キロ程度しか離れていません。台湾へ武力侵攻は地理的空間的に関わらず、日本の国土に対する重大な危険を引き起こさずにはいません。

台湾有事それは日本有事です。すなわち、日米同盟の有事でもあります。

本点の認識を、北京の人々は、とりわけ習近平主席は、断じて見誤るべきではありません。(文字起こしここまで。)

安倍氏は3カ所ほどにわたり、「尖閣諸島などは日本国の領土である」と明言したに等しい内容のことを言っている。

カイロ密談と尖閣諸島の領有権に関して

拙著『チャイナ・ギャップ』や『完全解読「中国外交戦略」の狙い』などで詳述したように、1941年11月23日から25日にかけて、当時のアメリカ大統領ルーズベルトと「中華民国」主席の蒋介石はカイロで密談を行った。このときルーズベルトは蒋介石に「アメリカとともに日本を爆撃することに協力すれば、日本を敗戦に追いやった後に琉球群島(沖縄県)を貴国にあげよう」と誘い込んだのだが、蒋介石はその申し出を断っている。この事実は秘密にされていたのだが、当時の部下の外交部長によってばらされてしまい、周辺の知るところとなってしまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

欧州首脳、中国に貿易均衡と対ロ影響力行使求める 習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中