最新記事

中国軍事

中国潜水艦隊の脅威にパニクった周辺諸国が買いあさる軍備とは

China's Submarine Fleet Is Catching Up to U.S., Causing Partners to Panic

2021年11月2日(火)19時03分
ナビード・ジャマリ/トム・オコナー
中国潜水艦隊

周辺諸国にとって中国の潜水艦は大きな脅威 CHINESE PEOPLE'S LIBERATION ARMY NORTHERN THEATER COMMAND

<オーストラリアやインドなどの周辺諸国はもちろん、遠くはドイツやイギリスも欲しがるP8哨戒機の能力>

中国が軍の近代化の一環として潜水艦能力を強化しているのに対抗し、中国の周辺のアメリカの同盟諸国が能力の強化を急いでいる。

オーストラリアやインドのような国々は今、「P8(ポセイドン)」と呼ばれる旅客機サイズの対潜哨戒機を次々と発注している。この2カ国は日本とアメリカと共に、「自由で開かれたインド太平洋」を目指す枠組み「クアッド(日米豪印戦略対話)」を形成している。

ドイツ、ノルウェーやイギリスのように中国から遠く離れた国々も、同哨戒機を購入している。米国防総省のある諜報担当者は、各国が次々と対潜水艦システムを購入しているのは、偶然ではないと指摘する。

211102p8.jpeg
2017年、行方不明の潜水艦の捜索に出発する米海軍P-8哨戒機 Magali Cervantes- REUTERS

「中国は水中戦の戦闘能力を、南シナ海の外にも拡大しつつある。中国と領有権争いを繰り広げている国々だけではなく、太平洋地域全体にとっての戦略的脅威だ」と、前述の諜報担当者は本誌に語った。「同盟関係にあるすべての国々が、中国の潜水艦を監視および探知できる能力を持つことが不可欠だ。P8哨戒機は、そのタスクを実行するための最高の能力を備えている」

さらにこの人物は、次のように述べた。「高度の対潜戦闘能力も備えたP8哨戒機は、中国の潜水艦に対抗する上での最善の解決策だ」

主要2モデルの潜水艦の改修計画も

対潜哨戒機P8およびP8Aを製造している米航空大手ボーイングの広報担当者によれば、同哨戒機は「世界中に配備されている。これまでに135機以上が就役しており、40万時間以上を無事故で飛行している」。

だが中国の軍事力もまた増強を続けている。

米国防総省は、2020年9月に発表した中国の軍事力に関する報告書(2020年版)の中で、中国は攻撃型通常動力潜水艦を50隻、攻撃型原子力潜水艦を6隻、さらに弾道ミサイル原子力潜水艦を4隻保有していると推定している。アメリカは68隻の潜水艦(いずれも原子力潜水艦)を保有していると推定されるが、中国は保有数を急速に増やしている。

同報告書は、中国海軍にとって潜水艦の開発は「優先度が高い」と説明。中国海軍は「2020年代を通して65隻から70隻の潜水艦を維持する可能性が高く、古くなった潜水艦は随時、より高機能のものと交換していくだろう」と推定する。

またフランスの専門家エリック・ジェネベルと、かつて米海軍の潜水艦技師だったリチャード・W・スターンが9月に発表した報告書によれば、中国は「夏」級092型と「晋」級094型の2つの主要モデルの潜水艦について、改修を計画しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中