最新記事

反ワクチン

医学的な懸念から、政治の道具に変わった「ワクチン懐疑論」の実情

YOU CAN’T MAKE ME

2021年10月27日(水)21時30分
スティーブ・フリース

今後の展開は変異株次第か

ミズーリ大学カンザスシティー校の医学部長で小児科医のメアリー・アン・ジャクソンによれば、現に圧倒的多数の親はわが子にワクチン接種を受けさせており、反ワクチン派の存在が自分の子や家族の健康にとって脅威になると気付けば、もう黙ってはいないはずだという。

「あなたがお子さんへのワクチン接種を拒み続けるなら、もう私のクリニックにお子さんを連れてこないでください。そう告げている小児科医もいる」と彼女は言う。ワクチンを接種していない子が同じ待合室にいたら、体の弱っている子たちが麻疹などに感染し、重症化する恐れがあるからだ。

権力によるワクチン接種の義務付けに反対するホランドは、自分たちの主張が共和党の立場に近いことは認めつつも、必ずしも共和党と一枚岩ではないと言う。「民主党はワクチン接種推進でほぼ足並みをそろえているが、共和党はどうか。ワクチン接種を選ぶか否かは個人の権利だという考え方が共和党の綱領にしっかりと組み込まれているとは、少なくとも私には思えない」

いずれにせよ、この全国的なワクチン論争の行方を左右するのは、政治的な主張ではなく客観的な数字だろう。新型コロナのワクチンで本当に爆発的な感染が止まるかどうか。そして接種完了者と未接種者の間で重症化率や死亡率に大きな違いがあることが証明されるかどうかだ。

CDCによる直近の調査では、ワクチン未接種の人は接種済みの人に比べて、新型コロナへの感染確率が5倍、入院を要する重症化の確率は約29倍という結果が出ている。ワクチン接種済みの人では死亡率が90%も下がるという報告もある。だが、そういう状況が続く保証はない。

「とんでもない変異株が出現すれば(ワクチンが効かなくなり)死亡率が上がるリスクはある」と言うのはコネティカット州議会でワクチン義務化を推進してきたスティーブ・メスカーズ議員だ。

「そうなれば『どうせワクチンなんて効かない』という議論が再燃しかねない。そして既存のワクチン全てが疑われるようになったら、それこそ悲劇だ」

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中