最新記事

NAVY SEALS

ネイビー・シールズ地獄の訓練で「嘘だろ?」...衝撃の展開が示したリーダーシップの重要性

EXTREME OWNERSHIP

2021年10月11日(月)10時45分
ジョッコ・ウィリンク(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」指揮官)、リーフ・バビン(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」小隊指揮官)

magSR20211011navyseals-2-2.jpg

ウィリンクとリーフ・バビンはイラク戦争に参加し、2006年のラマディの戦いでネイビー・シールズの精鋭部隊「ブルーザー」を率いた(ラマディ中心部に配置されたM2ブラッドレー歩兵戦闘車) COURTESY OF JOCKO WILLINK AND LEIF BABIN

今の私(リーフ・バビン)は、シールズ教官が着るブルーとゴールドのシャツを身に着けている。2度にわたってイラクに派遣された後、海軍特殊戦訓練センターに配属され、将校のリーダーシッププログラム、「初級将校訓練コース」を指導することになったからだ。

その本業に加えて、「地獄週間」も教官としてサポートしていた。

BUD/Sの訓練生は、身長によって、7名ずつの「ボートクルー」と呼ばれるチームに分けられる。7名のボートクルーには、1隻の小型ゴムボート(IBS)が与えられる。

海軍では「小型」と呼ばれるこのボートは、手で運ぶには恐ろしく大きく、恐ろしく重い。この大きめのゴムボートは黒色に黄色い縁取りが施され、重さは90キロほどあり、水や砂がどっさり入るとさらに重くなった。

第2次世界大戦中の海軍戦闘潜水員(フロッグマン、水中爆破班)の遺物であるこの忌まわしいボートは、あらゆる場所へぎこちなく運ばれる。たいてい7名のクルーの頭が、下から必死で支えているのだ。

ボートクルーは、陸の上では、ボートを頭上に載せたまま、高さ6メートルの浜段丘[訳注:波の作用で砂浜にできる段丘]を登って越えて、そのままビーチを何キロも走る。海軍水陸両用基地コロナドでも、ボートを運んで硬いアスファルトの道路をあちこち往復し、先導する教官に必死で食らいついている。

悪名高い「BUD/S障害物コース」では、扱いにくいボートを押したり、引いたり、押し込んだり、力ずくで持ち上げたりしながら、ロープを越え、電柱を越え、壁を越えていく。

太平洋に出ると、ボートクルーは、打ち寄せる強烈な波と戦いながらオールを漕ぐ。転覆して、難破船さながらにずぶ濡れの訓練生とオールが、ビーチにまき散らされるのも珍しくない。

どのレースでも、素晴らしい働きをする者たちはいる。この「地獄週間」では、あるボートクルーがずっと、ほかのチームを圧倒していた。ボートクルーIIが、ほぼ全レースを制覇していたのだ。

彼らは毎回努力し、チーム一丸となって戦っていた。ボートクルーIIには強いリーダーがいて、メンバーも意欲的で、誰もがしっかり働いているように見えた。互いに弱点をカバーし合い、助け合い、勝つことを誇りにし、報われていた。

一方、ボートクルーVIは、別の意味で目立っていた。ほとんどのレースで最下位に沈み、ほかのチームに大きく水をあけられていた。

誰もがチームとしてではなく、個人として動き、チームメイトに腹を立ててはイライラを募らせていた。少し離れていても、怒鳴り合い、罵り合い、「おまえは務めを果たしてない!」と誰かを責める声が聞こえていた。どのメンバーも、自分の苦しみや不快感にばかり目を向けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中