最新記事

アフガニスタン情勢

アフガン自爆テロ、ISからシーア派を守りたいイランからの警告

Iran Warns Against 'Divisive Schemes' in Afghanistan as ISIS Wages War Across Ethnic Lines

2021年10月18日(月)18時31分
トム・オコナー

イラン当局者はまた、この混乱をきっかけにアフガニスタン人が、聖地の防衛を強化することを求めた。

「数々の悲劇的な出来事によって、治安の強化と、シーア派およびスンニ派の礼拝所やその他の集会の保護を強化する必要性が出てきた」と、イラン外務省は付け加えた。

「イラン・イスラム共和国は、アフガニスタンのイスラム教徒が連帯、共同思考、協力を通じて、分裂をねらう敵の計画を失敗に導くことを確信している」

アフガニスタン、イラン、パキスタンの政府は長年に渡って様々な反政府勢力と戦ってきた。その多くは、宗派の境界を越えて動員されている。

非国家組織や過激派組織の研究者で、国際的過激派の活動を分析するニュースサイト「ミリタント・ワイアー」の編集者であるルーカス・ウェバーは、ISが最新の2回の攻撃で犯行声明を出したのは、偶然ではない可能性が高いと述べた」

多様な民族をテロに動員

「ISは、さまざまな民族出身のメンバーがこうした攻撃の実行を担っていることを故意に見せつけているように思える」とウエバーは本誌に述べた。「ISの組織とイデオロギーが民族の壁を少なくともある程度は超えられることを、部分的にでも示すためだ」

タリバンやアルカイダとISとではそもそもの成り立ちが違う。タリバンとアルカイダは、1980年代のソ連によるアフガニスタン侵攻に対するムジャヒディン(イスラム戦士)の抵抗運動から生まれた(ちなみにムジャヒディンたちはアメリカやパキスタンから支援を受けていた)。

だがISは、アメリカのイラク侵攻によるフセイン政権崩壊後の2003年、イラク国内のアルカイダ系組織から派生した。それから2年後、アメリカはアルカイダをかくまったタリバン政権を打倒するため、アフガニスタンに侵攻した。

米軍のアフガニスタン駐留は約20年に及んだが、昨年2月にトランプ政権がタリバンと結んだ和平合意に基づき、今年8月末に撤退を完了した。アフガニスタン政府軍は全土であっという間に瓦解し、タリバンのカブール制圧に道を開いた。タリバンは9月、「アフガニスタン・イスラム首長国」の復活を宣言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、「グリーンウォッシュ」巡り最終指針 ファンド

ビジネス

エーザイ、内藤景介氏が代表執行役専務に昇格 35歳

ビジネス

米ボーイング、4月商用機納入が前年比2機減の24機

ワールド

ロシア、潜水艦発射型ICBM「ブラバ」本格配備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中