最新記事

奇病

アジア歴訪中のカマラ・ハリス一行を襲った?「ハバナ症候群」とは何か

What Is Havana Syndrome? Kamala Harris Singapore Trip Slightly Delayed Over Suspected Case

2021年8月25日(水)16時30分
ゾーエ・ストロズースキ
カマラ・ハリス米副大統領

ベトナムに到着したアジア歴訪中のカマラ・ハリス副大統領(8月24日) Evelyn Hockstein -REUTERS

<ベトナムに向かうハリス副大統領一行の出発を遅延させたのは、2016年以来、米外交関係者に原因不明の体調不良を引き起こす「ハバナ症候群」とみられるが>

ハノイにある在ベトナム米大使館によると8月24日、シンガボールからベトナムに向かおうとしていたカマラ・ハリス米副大統領の一行の出発が数時間遅れた。原因は、「異常な健康事案」の発生だった。

AP通信の報道によれば、この「異常な健康事案」は、「ハバナ症候群」とみられている。2016年後半にキューバの首都ハバナに駐在していたアメリカの外交官や米政府職員が初めて訴えたことから、この名前がついた。ハノイでこの症状を経験した職員の数や身元は明かされていない。

医療情報サイトのウェブMDがまとめた報告によると、ハバナ症候群には、頭と耳の突然の痛みや圧迫感、正体不明の大きな音が聞こえる、吐き気、精神錯乱、見当識障害といった症状がある

頭痛、疲労、不安、様々なレベルの記憶喪失といった合併症もあり、外国に駐留していたアメリカ人外交官や職員の一部を帰国させた例もある、とワシントンポストは報じた。

医療関係者は、この症状の原因を特定できていない。一部には、標的を絞ったマイクロ波または音波による攻撃だという説を唱える人々もいる。

2016年の最初の報告以来、ドイツ、オーストリア、ロシア、中国などの国々で外交関係の仕事に携わるアメリカ人から、同様の原因不明の健康事案が報告されている。また、ワシントン周辺でも、ホワイトハウスの近くでの1件を含め、少なくとも2件のハバナ症候群とみられる事案の報告がある、とAP通信は報じた。

本当に「攻撃」なのか

AP通信による報道は以下の通り。

シンガポールを訪れたハリスは、演説を行い、南シナ海の領有権を主張する中国を厳しく非難し、現地の財界首脳らとサプライチェーン問題について話し合った後、8月24日夕方にハノイに向けて出発する予定だった。

だが出発は3時間以上遅れた。そして、ハリスの主任報道官シモーネ・サンダースは遅延についての説明を拒んだ。そして記者に質問されてもいないのに、ハリスは「元気だ」と述べた。記者らは24日に何度かハリスに会っていたが、健康状態に懸念は感じていなかった。

米議会は攻撃とみられるこの現象に警戒感を強め、上下院ともに、この症候群に関する全政府レベルでの調査の継続と対応、そしてアメリカ人職員の健康状態の監視と治療に対する資金提供を超党派で支持している。

攻撃とみられる事案の報告が急増するなか、バイデン政権はこの現象を解明する圧力にさらされている。だがこれらが本当に攻撃によるものなのか、攻撃だとすればその背後に何者がいるのか、監視用装置によって不注意に引き起こされた可能性もあるのではないか、といった点について、科学者や政府関係者はまだ確信に至っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中