最新記事

リーダーシップ

全米230万人が読んだ、イラクの戦場で生まれたリーダーシップ論

2021年7月20日(火)18時23分
ジョッコ・ウィリンク、リーフ・バビン

ベトナム戦争から「対テロ世界戦争」までの30年間、米軍は事実上、持続的な戦闘活動のない状態を経験した。(グレナダ、パナマ、クウェート、ソマリアといった)例外はいくつかあったが、実際の戦闘経験を持つ米軍のリーダーは一握りしかいなくなっていた。シールズ・チームにとっても、それは「空白の年月」だった。ベトナムのジャングルで激しい戦闘を経験した人たちは退役し、彼らが学んだ戦闘のリーダーシップの教訓も失われつつあった。

そんなすべてが、2001年9月11日に変わった。米国本土を襲った恐ろしいテロ攻撃が、米国を再び持続的な戦闘状態へと引きずり込んだのだ。10年を超えるイラクやアフガニスタンでの厳しい戦闘活動を通して、米軍の戦闘部隊のさまざまな階級で、新世代のリーダーたちが生まれた。

このリーダーたちは、教室での仮想訓練や理論から生まれたのではなく、戦争の最前線――前線部隊(フロント・エシュロン)――で、実地体験から生み出された。数々のリーダーシップ理論や仮説が、戦火の試練の中で厳しく試され、米軍のあらゆる階級で、忘れ去られた戦時の教訓が再び――血で――書き直されることになった。

訓練で培われた「リーダーシップの原則」の中には、戦場では役に立たないものもあった。そういうわけで、使えない原則は捨てられ、実効性の高いリーダーシップ・スキルが磨かれて、米軍全体――陸軍、海兵隊、海軍、空軍――および同盟国軍のあらゆる階級から、新世代の戦闘のリーダーが生み出されていった。

米海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」のチームは、このリーダーシップ変容の最前線にいた。この変容は、戦争の勝利と悲劇を通して、とてつもなく困難な環境で成功するには何が必要なのかを、明確に理解することから生まれた。

新世代の戦闘リーダーにまつわる、戦争の物語は数多くある。長年の間に、オサマ・ビンラディンを殺害した勇ましい奇襲のような作戦の成功もあって、「ネイビー・シールズ」は世間の関心をそそり、望んだ以上の注目を集めてきた。そのせいで、組織の秘密にしておくべき側面にもスポットライトが当たってしまった。

本書においては、そうした覆いをこれ以上剝がすことがないよう、注意を払っている。機密計画について詳しく語ったり、自分が関わった軍事作戦の機密保持契約を破ったりしないように。

これまでに、シールズにまつわる数多くの回顧録が出版されている。中には経験豊富で広く尊敬されている隊員が、チームの勇敢な行為や偉業を伝えようと執筆したものもある。しかし、残念ながら一部には、仲間たちにあまり貢献しなかった隊員が書いた本もある。シールズの多くのチームメイトと同様に、私たちもシールズの本が出版される際には、ネガティブな見方をしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ルノー、モビライズ部門再編 一部事業撤退・縮小

ビジネス

中国の新規銀行融資、11月は3900億元 予想下回

ビジネス

ECB、大手110行に地政学リスクの検証要請へ

ワールド

香港の高層住宅火災、9カ月以内に独立調査終了=行政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中