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米中関係

「バイデン・習近平」会談への準備か?──台湾問題で軟化するアメリカ

2021年7月10日(土)13時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●台湾問題に対する中国の立場は、一貫しており明確だ。 世界には「一つの中国」しかない。台湾は中国の不可分の領土だ。「一つの中国」原則は中米関係の政治的基盤だ。

●中国は、アメリカが、中米関係と台湾海峡の平和と安定を損なわないよう求める。  (他は常套句なので省略する。)

報道官は台湾問題に触れた後、習近平が建党百年演説で述べた主張を、第一から第四までとして、滔々と述べた。これも長いので省略するが、これらは明らかにキャンベルが言った「中国はますます自信を付けてきた」に対する「証拠」として列挙したと解釈できる。

麻生発言「台湾有事なら日米で防衛」

このような折も折、麻生財務大臣兼副総理は、7月5日の講演で、「台湾で大きな問題が起きれば、存立危機事態に関係する」として、「日米で台湾を防衛しなければならない」と語った。

「台湾有事」は「日本有事」と受け止めるべきで、この時にこそ日米安全保障条約の下に日本はアメリカと共に戦わなければならないということになる。

これに対する中国外交部の反応は激しいもので、戦狼性の高い趙立堅報道官が眉間にしわを寄せて「強烈な不満」を表明し「断固反対!」と声を荒げた。

キャンベルが「中国とは平和的共存」をすべきで「台湾独立を支持しない」と驚愕的な講演をしたのは、麻生発言の直後のことだ。これでは日本は梯子を外されたような格好ではないか。

何度も例に引いて申し訳ないが、前述した4月21日のコラム<「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する理由>で私は、アメリカが「米軍は中国軍より弱い」とか「6年以内に中国は台湾を武力攻撃するだろう」などと発信し続けるのは、「台湾有事の時には、日本が矢面に立って下さいね」ということを暗示しているに過ぎないと書いたが、今般の「キャンベル発言と麻生発言」は、まさにその予測をそのまま見せてくれたような対比を成しているように思われる。

私は他のコラムでもバイデン政権の「対中強硬政策の本気度」を慎重に見極めなければならないと書いてきた。このたびのアメリカの一連の流れを受けて、ますますその警戒感を強めた次第だ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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