最新記事

新型コロナウイルス

隠したいことだらけの中国、ウイルス起源の調査には二度と協力しない

NO INVESTIGATION AGAIN

2021年6月30日(水)12時05分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
WHO調査団が宿泊中のホテルの警備員

WHO調査団が宿泊中のホテルの警備員(2月) ALY SONG-REUTERS

<新型コロナウイルスが武漢研究所と無関係であったとしても、政府の失敗を認めるような調査への協力はあり得ない>

新型コロナウイルスの起源調査への協力が中国にとって最も利益になる──バイデン米政権はそう繰り返してきた。そのとおりだろう。純粋な科学的精神の下で、各国が手を携える理想的な世界なら。

だが新型コロナが武漢ウイルス研究所と無関係でも、現場レベルから最高指導部まで、中国の当局者には隠したいことが山ほどある。

中国は研究所からの流出説だけでなく、中国が新型コロナの発生源であること自体を否定している。

2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行後に講じた各種の予防措置を考えれば、新たなウイルスが中国で出現する事態はあってはならなかった。それに、どんな国も世界的大惨事の責任は負いたくない。体面を気にした中国当局は早くも昨年3月には、アメリカが新型コロナの起源だという説を喧伝していた。

中国と欧米の科学者による新たな研究では、当局の主張と裏腹に、武漢で野生動物が大量販売されていたことが判明した。武漢の地方政府が初期の流行の抑え込みに失敗し、適切な対応が遅れた一因がおそらく国家の指導部にあることも、中国が認めたくない問題だ。

中国政府も発生源を把握していない?

中国政府は、新型コロナの発生源を把握していない可能性が高い。研究所で事故があったのなら、関係者は外国だけでなく、国内当局の目からも隠そうとしたはずだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以前、中国政府はウイグル人弾圧や言論統制に注力しており、農村部の保健や野生生物に関する規制は野放し状態だった。

米中関係は過去数十年間で最悪で、 習近平 国家主席の下では政治的弾圧が日常だ。つまり、トップの絶対的な承認がない限り、特にアメリカが加わる国際調査にゴーサインを出す当局者はいない。

新型コロナをめぐる政治的動機に満ちた言説のせいで、そうした承認の可能性はゼロだ。同時に、中国の世論は調査協力を支持していない。研究所からの流出説に基づく非難が、中国の一般市民の目にどう映るか考えてみるといい。

パンデミックにちぐはぐな対応をし、国際社会での説明責任を拒絶する中国は今、うまく対応した国に非難の矛先を向けている

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国製造業PMI、12月は9カ月ぶり節目回復 非製

ビジネス

エヌビディア、イスラエルAI新興買収へ協議 最大3

ビジネス

ワーナー、パラマウントの最新買収案拒否する公算 来

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中