最新記事

ウイルス起源

「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!

Exclusive: How Amateur Sleuths Broke the Wuhan Lab Story

2021年6月4日(金)21時25分
ローワン・ジェイコブソン
中国から周辺に拡大する新型コロナウイルス

中国政府と武漢ウイルス研究所はやはり嘘をついていた Maxiphoto-iStock

<パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ>

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。

ワシントン・ポストは2020年初め、「専門家が何度もその誤りを証明した陰謀論を、執拗に蒸し返している」として、トム・コットン上院議員を批判。CNNは「陰謀論や誤情報を信じている友人や家族を説得する方法」を伝え、ニューヨーク・タイムズも「非主流の説」扱いをし、公共放送のNPRも「研究所の事故で流出したという説は虚偽だと証明されている」と述べるなど、アメリカの他の主要メディアもおおむねこの説を否定していた。

そうした中で、本誌は例外的に2020年4月、武漢ウイルス研究所(WIV)はウイルスの病原性や感染性を強める「機能獲得型」研究を行なっており、ここから流出した可能性も否定できないと報道した。同様の報道を行なったのは、左派系雑誌のマザー・ジョーンズに加え、ビジネス・インサイダー、ニューヨーク・ポスト、FOXニュースと、ごく少数のメディアだけだ。

あるのは好奇心と根気だけ

だがこの1週間ほど、研究所流出説がにわかに注目を浴び始めた。ジョー・バイデン米大統領は情報機関に追加調査を指示。主要メディアも手のひらを返したように、流出説をあり得る仮説として扱い始めた。

雲行きが変わった理由は明らかだ。この何カ月かの間に武漢の研究所からの流出を疑わせる状況証拠が次々に明るみに出て、無視できないほどに蓄積された。

それらの証拠を探り当てたのは、ジャーナリストでもスパイでも科学者でもない。アマチュアの「探偵」たちだ。彼らの武器は好奇心、そして来る日も来る日もインターネット上の膨大な情報をかき分け、手掛かりを探す根気強さ。それだけだ。

パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国財政相会見、刺激策の「規模」不明 市場の期待は

ビジネス

情報BOX:中国、景気底上げへ積極財政出動 財政相

ビジネス

中国9月CPI減速、PPIは半年ぶり下落率 デフレ

ワールド

イスラエル、イラン攻撃目標を軍・エネ施設に絞り込み
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリメント「3つの神話」の噓を暴く
  • 2
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 5
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 6
    迫るロシア軍からドネツク州ポクロフスク近郊で、大…
  • 7
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 8
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…
  • 10
    アルツハイマー病治療に新たな可能性...抗がん剤投与…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 6
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 7
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中