最新記事

日本社会

大卒者の県外流出で地域格差がさらに拡大する

2021年6月23日(水)10時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
東京のビジネスマン

データから首都圏が地方の高度人材を吸い上げていることが見える monzenmachi/iStock.

<下位3県の長崎、秋田、佐賀では、大卒者の地元定着率は50%代しかない>

大学進学率は時代とともに高まり、今では同世代の半分(50%)を超える。地域格差は大きいものの、地方でも進学率は高まっている。

さて地方の親の関心事は、都会の大学に出たわが子が帰ってきてくれるかどうかだ。行政にしても、東京や大阪の有名大学に進学した生徒が地元に戻ってきて、地域の発展に尽くしてくれるかには関心を持っている。筆者は鹿児島県出身で、高3のクラスの半数以上が県外の大学に進学したと記憶しているが、どれくらい戻っているのだろう。

2017年の『就業構造基本調査』によると、同年10月時点で鹿児島県に住んでいる40代前半の大学・大学院卒者は2万700人となっている。2017年の40代前半というと、1992〜96年に大学に進学した筆者の世代だ。鹿児島県の高校出身の大学入学者は1992年春が5798人、93年春が6207人、94年春が6025人、95年春が6278人、96年春が6606人となっている(文科省『学校基本調査』)。5年間の合算は3万914人だ。上の世代の入学者(浪人経由者)も含んでいるが、当該世代からも同数の浪人経由者が出るとみなす。

この世代の鹿児島出身者からは高卒時に3万914人(a)の大学進学者が出ているが、40代前半になった2017年時点で同県に住んでいる大学・大学院卒者は2万700人(b)。2つの数値に隔たりがあるのは、都会の大学に進学したが戻っていない、ないしは地元の大学を出た後、他県に就職した人がいるからだ。

大卒者のどれほどが地元に定着しているかは、上記の(b)を(a)で割って算出される。%にすると67.0%だ。当該世代の大卒者の地元定着率と呼ぼう。鹿児島県の筆者の世代だと7割弱ということになる。他県からの大学進学者や大卒就職者が押し寄せる東京では、この数値は155.0%にもなる。同じやり方で各県出身の大卒者の地元定着率を計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。

data210623-chart01.png

都市部では膨らんで地方では萎むのが道理だが、その程度は県によってまちまちだ。13の県が7割未満で、3つの県では6割を下回る。最も低い長崎では51.8%だ。都会の大学に出たが戻ってこない、自県の大学を出た人が県外に就職してしまう。どちらが大きいかは分からないが、才能の流出は大きい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中