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大卒者の県外流出で地域格差がさらに拡大する

2021年6月23日(水)10時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

性差を見ると、男性より女性で高い県が多い。女性の自県大学進学率、自県内就職率が高いためだろう。しかしその逆の県もある。<図1>は横軸に男性、縦軸に女性の地元定着率をとった座標上に47都道府県を配置したグラフだ。

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斜線は均等線で、この線より下にある県は「男性>女性」ということになる。宮城、大分、鹿児島では女性が男性より10ポイント以上低く、鹿児島では17ポイントもの差がある(男性71.9%、女性55.2%)。

大卒者の働き口が少ないことが大きいだろうが、高学歴女性への眼差しもあるかと思う。九州の各県では大卒女性の未婚率が高く、かつ同じ条件の男性と比較して有意に高い(本サイト「日本の高学歴女性は未婚率が高いが、特にその傾向が強い地方は...」2021年3月10日)。これは地域の文化に関わることだ。「女性の役割は家庭で子を産み育てること」。こういう考えが強いようでは、大卒女性の地元定着は望むべくもない。兵庫県豊岡市はこの点に注目し、ジェンダーギャップ解消の取り組みをしている。

大卒者の地元定着率を県別に出すと、都市が地方の高度人材を吸い上げ、地域格差が拡大再生産されている状況がうかがえる。地元に居住できずとも、IT化が進んだ現在では物理的距離を越えて郷里と関わることはできる。いわゆる「関係人口」の創出が求められている。そのインセンティブを高めるべく、学校では生まれ育った地域を愛する郷土教育を充実させることが必要だ。育むべきは、ムラを捨てる学力ではなくムラを育てる学力だ。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    文科省『学校基本調査』

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