最新記事

日本経済

日本の人手不足の背景にある「即戦力の人を採れない」事情

2021年4月28日(水)10時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
人手不足イメージ

リーマンショック以降、人手不足は年々深刻になっている takasuu/iStock.

<単に人が集まらないだけでなく、資格やスキルを持つ即戦力が見つからないことも要因に>

人手不足が言われるようになって久しいが、その程度を測る指標として「労働者の過不足DI」というものがある。

労働者が不足している事業所の割合から、過剰の事業所割合を引いて算出される。厚労省が3カ月おきに実施している『労働経済動向調査』では、常用労働者30人以上の民間事業所に労働者の過不足を尋ね、上記のDI指数も算出されている。

2020年11月の調査によると、常用労働者が不足していると答えた事業所は32%で、過剰と答えた事業所は7%だ。よって過不足DIは、前者から後者を引いて25ポイントとなる。コロナ禍で雇用が冷え込んでいるとはいえ、まだ人手不足の事業所の方が多い。

時系列変化をたどると、時代の色がはっきりと出ている。<図1>は、1999年から2020年までのDI指数の推移だ。各年の2月、5月、8月、11月の値を平均した数値による。

data210428-chart01.png

1999〜2003年は値がマイナスだ。これは、労働者が不足の事業所よりも過剰の事業所が多いこと、すなわち「人余り」の状況を意味する。

97年に山一證券が倒産、翌年に経済状況が急激に悪化し、自殺者が年間3万人を超えた。まさに経済が「どん底」の時期で、99年に大学を卒業した筆者は当時の状況の厳しさを肌身で知っている。この頃に学校を卒業した世代が、いわゆる「ロストジェネレーション」だ。

その後は団塊世代の定年退職もあり、DIはプラスに転じる。2009年にマイナスになっているのは、リーマンショックの影響とみられる。

2010年以降は人手不足の企業が増える一方で、2018年のDI指数は47ポイントと過去最高になった(不足49%、過剰2%)。団塊世代の退職は過ぎていたが、震災復興やオリンピックに伴う建設需要、高齢化による介護需要などが高まっているためだろう。2020年はコロナ禍の影響でDIはやや下がっているが、人手不足の状況に変わりはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

黒海でロシアのタンカーに無人機攻撃、ウクライナは関

ビジネス

ブラックロック、AI投資で米長期国債に弱気 日本国

ビジネス

OECD、今年の主要国成長見通し上方修正 AI投資

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、11月は前年比+2.2%加速 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 6
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 7
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中