最新記事

中国

中国を礼賛し、民主化運動を妨害する欧米の若者たち「タンキー」が増殖中

Activists vs. Tankies

2021年4月7日(水)16時38分
セバスチャン・スコウ・アンデルセン、トーマス・チャン

210413P28_CGK_02.jpg

PHOTO ILLUSTRATION BY BEEBRIGHTーISTOCK


現在では、中国が「奇跡」の経済発展を遂げたのは中国流の統治モデルが優れている証拠だと信ずる極左の自称マルクス・レーニン主義者を指す蔑称として用いられることが多い。ただし一部のマルクス・レーニン主義者が開き直って、タンキーを自称することもある。

いずれにせよ、彼らは体制(中国の場合は共産党と漢民族による支配)を守るためなら反対派(少数民族や民主派など)をつぶすのは当然と考える。「とにかく有害で不愉快だ」とムートは言う。「弾圧されている側の身になってみろ。こちらは警官に銃を突き付けられ、法律で自由を奪われているんだ」

タンキーたちは「海外の自由で安全な国にいて、お気楽な生活を送りながら、弾圧される側の私たちに向かって、おまえらの主張は間違っているとか、殺されて当然だとか決め付ける」。そんなのはおかしいとムートは怒る。

しかもタンキーの多くは若い世代。香港の民主派やイスラム教徒のウイグル人、アジア・アフリカ諸国の民衆など、中国共産党の拡張政策で犠牲になっている人々の間でタンキーへの懸念が高まるのは当然だろう。タンキーの声はまだ小さいが、(トランプ時代のアメリカを見れば分かるように)SNSにあふれる妄言が欧米諸国の世論や外交政策に影響を及ぼす事態は十分に想定し得る。だから警戒が必要なのだ。

欧米は資本主義を強制

一方、YouTubeでマルクス・レーニン主義を標榜し、登録者を2万人以上抱えるチャンネルを運営している自称ベイエリア415(匿名を希望)は、自分が中国政府を支持するのは、あの国がこの数十年で何億もの人民を貧困から救い出すことに成功したからだと主張する。

「中国は絶対的な貧困を根絶し、新型コロナウイルスの感染を封じ込め、急速な経済成長を遂げ、手厚い公的助成金や公共事業などを通じて富の分配を促進している。これを見れば、中国の統治システムこそ本物だと考えざるを得ないだろう」と、ベイエリア415は本誌に語った。

「中国のシステムは(欧米のそれとは)別物で、より優れており、効率的であることは明らかだが、中国は自国のモデルを輸出して他国を強制的に社会主義に変えようとはしていない。欧米の帝国主義者が資本主義を他国に強制しているのとは大違いだ」とも語り、こう続けた。「中国の人民民主独裁制は、自国の経済の舵取りを素晴らしくうまくやっている。市場原理を資本家ではなく、人民の利益のために使っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中