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「息子は若く見えるし、若い女性なら孫を2人は産めるから」代理婚活に励む親たち

2021年4月23日(金)15時20分
印南敦史(作家、書評家)

やはり、現代において結婚はそれほど難しいものなのだろう。だからこそ、本書に「価値観の多様化で、ほとんどの人が結婚した『皆婚社会』は終わりを迎え、男性の4人に1人、女性の7人に1人が一度も結婚しない時代になった。若い世代にとって結婚は絶対ではなくなりつつある」と書かれていることにも納得せざるを得ない。

「代理婚活」親と問題発言をする政治家との共通点

ただし気になるのは、この後に続く一文だ。それは、本書の中で最も気になった部分でもある。最近では、独身の子に代わって親が嫁・婿探しをする「代理婚活」が盛況だというのである。


 東大卒の国家公務員の息子を持つ母親の前には女性の親の行列ができていた。まるでオーディションのように「うちの子は料理が得意なんです」「趣味が合うはず」と次々とアピールをしていく。男性の母親は「うちの息子は忙しいので、男性みたいにフルタイムで働いている女性は合わない。仕事はやめてもらえますか」と大企業に勤務する女性の親に尋ねていた。(113ページより)


「孫の顔が見たい」という思いも直球だ。
 72歳の母親は、48歳の息子の花嫁候補を20代に絞り、リストを見ながら候補者の席をくまなく回っていた。歳の差を理由に断られ続けたが、「息子は若く見えるし、若い女性なら孫を2人は産めるから」とめげない。
 子どもの写真を見せてもらうと、年相応の奥手そうな男性が写っていた。
「もう少し年齢が近い方が息子さんと話が合うのでは」と伝えると、「高齢出産になる。子どもが産めるか分からない女性では意味がない」という答えが返ってきた。
 普段の婚活ではオブラートに包まれている、「昭和の価値観」がむき出しになっていた――。(114ページより)

正直に言って、気持ちの悪い話だなと感じた。もちろん、その結婚が結果的に成功するのであれば、なにも問題はないだろう。だが少なくとも私は、そういうやり方で本当の幸せをつかめるとは思えない。

しかし、それを差し置いても興味深い部分がある。こうした親たちと、度々問題発言をする政治家たちが「昭和の古い価値観」という部分でリンクしているという著者の指摘だ。

2018年には自民党の二階俊博幹事長が「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」などの発言をした。翌年には「失言のデパート」こと桜田義孝五輪相(当時)がパーティーで「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」と呼びかけて顰蹙を買った。

それ以前にも「子どもを一人も作らない女性が好き勝手、自由を謳歌して、年を取って、税金で面倒をみなさいというのは、本当はおかしい」と発言した森喜朗氏、「女性は産む機械」と発言した柳沢伯夫厚生労働相(当時)など、その手の暴言を振り返れば枚挙にいとまがない。

なぜ、このようなことになるのか。理由はさまざまだろうが、非常に説得力を持つのが以下の主張である。

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