最新記事

感染症対策

現役医師が断言、日本の「ゆるいコロナ対策」が多くの命を救った

2021年2月17日(水)20時40分
大和田 潔(医師) *PRESIDENT Onlineからの転載

欧州でも、強力な措置が取られました。

ドイツでは、10万人あたり新規感染者が200人以上の場合は移動制限になります(注3)。1400万都市東京では、1日に3万人という規模です。500人を目標にしている東京が、世界的にみてどれだけ完璧すぎるか良くわかる実例です。

フランスでは、夜間外出禁止令も出されており大型ショッピングモールの閉鎖が指示されています(注4)。全土で夜間外出制限が命じられ午後6時までに帰宅という厳しい措置が取られています(注5)。

オランダでは、1月23日から夜間外出禁止令が発令されました(注6)。それに呼応し、規制を行う国側と市民が衝突。各地で放火などを伴う暴動が起きています(注7)。

ロックダウンは解決にならない

イギリスでは、1月に3度目のロックダウンを行いました(注8)。それでも長引く規制にもかかわらず、死者が10万人を超え国民に大きな不満が蓄積しています(注9)。

オーストラリアは、厳しい外出制限とほぼ鎖国に近い状態により市中感染が起きないところまできていました(注10、11)。ところが、2021年になり市中で変異ウイルス感染の感染拡大が再発しました(注12)。

2021年になり暴動を抱えながらも厳しい行動制限を国民に課しているオランダから、ロックダウンは意味がなかったという分析報告がありました(注13)。

新型コロナウイルスに対して、人間は完全に封じ込める力をもたないことを証明しています。厳しい制限をして発生数を減らすことはできるかもしれません。けれども一時ゼロにまで持っていってもどこかで発生してきます。

PCR検査を無限にやっても陽性者の隔離を厳密に行っても、封じ込めはできません。濃厚接触の掘り起こし追跡調査の終了は賢明な判断です。流行は下火になりました。昨年9月の「感染者ゼロを前提にすると、新型コロナは終わらない」で予想したとおりの経過をたどっています。

厳しいロックダウンで窮地のインド

JETROで、世界最大の厳しいロックダウンを課したインドの窮状が伝えられています(注14)。この報告の中で、インドを含め米国や欧州ドイツに比べて日本が大変に緩い規制だった調査結果がグラフで示されています。

自粛を強要する警察が、生活のためにやむなく家から出た国民を暴行している映像も流れました(注15)。

2020年3月にはすでに厳しい取り締まりが開始されていますが、1日に10万人以上の陽性者を出した9月中旬まで増加しつづけました。その後ゆっくり自然減少に転じていきました。これだけ厳しく取り締まっても、コロナの死亡者は15万人を超えロックダウンによる経済被害と合わせ甚大な被害は免れませんでした。

立法して警察組織が厳しく刑事罰を科しても、流行の急速な沈静化はできなかったのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、中国主席との会談実施を確認 対中100

ワールド

トランプ政権、民主党州で新たにインフレ支出凍結 1

ワールド

トランプ氏、ウクライナ大統領と会談 トマホーク供与

ビジネス

米セントルイス連銀総裁、雇用にリスクなら今月の追加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 9
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中