最新記事

韓国

韓国と中国、「キムチ論争」勃発

2021年2月5日(金)16時30分
佐々木和義

中国と韓国のあいだで「キムチ論争」が起きている......REUTERS/Kim Hong-Ji

<中国の人気ユーチューバーが投稿した動画が、韓国と中国の間に起きていた「キムチの起源」をめぐる論争に大きな火をつける形となった......>

香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙が、2021年2月3日、中国人ユーチューバー、リー・ズーチー(李子柒)さんのチャンネルが登録者数1410万人を突破して、ユーチューブ中国語チャンネルの最多登録者数部門でギネスブックの記録を塗り替えたと報じた。

四川省の農村で祖母と暮らしているというリーさんの動画は、牧歌的な生活風景や伝統料理などを映し出して世界的な人気を集めるが、1月9日に#chinesecuisine(中国伝統料理)、#chinesefood(中国の食べ物)などのハッシュタグを付けた動画で白菜キムチを漬ける様子を紹介し、韓国と中国の「キムチの起源」論争に火を付けた。

リー・ズーチーさんが白菜キムチを漬ける動画 7:01〜8:30


中国ではキムチも泡菜の一種と見なされている

キムチといえば赤くて辛い漬物を連想するが、野菜を塩漬けにした保存食で、韓国では「ムルキムチ」と呼ばれる白いキムチも食べられている。1760年代に朝鮮で飢饉が起き、高騰した塩の代替品として唐辛子が使われたのが赤いキムチの始まりといわれている。

キムチは韓国併合の1910年以降、朝鮮漬けの名で日本に伝わったが、あまり普及することはなかった。1988年のソウル五輪を機にテレビや新聞、雑誌などが韓国特集を組んで「キムチ」の名が浸透し、さらに、2002年の日韓ワールド杯や2003年の「冬のソナタ」の放映で第一次韓流ブームが起きると、エンターテインメントと合わせて韓国料理が人気となって日本国内で普及した。

2020年11月、四川省眉山市の市場監督管理局の主導で「泡菜(パオツァイ)」が国際標準化機構(ISO)の認証を受けると、同月28日、中国・環球時報が「キムチ(泡菜)宗主国、韓国の恥辱」と報じ、韓国と中国のキムチ論争がはじまった。泡菜は野菜の塩漬けを意味しており、中国ではキムチも泡菜の一種と見なされている。

環球時報の記事に対し、韓国メディアは「中国キムチが国際標準になった」と報道、問題に対処できなかったとして「韓国外交の無能」と言及した。

一方、中国のネットユーザーは「キムチをたくさん食べるから宗主国だと主張するのか」「中国から持っていっておきながら、自分たちのものだと言い張れば済むと思っているのか」など、過激な反応を見せてキムチ論争が拡大した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EU、TikTokにルーマニア選挙データ保存命令 

ワールド

再送-イスラエルのガザ攻撃は「ジェノサイド」、アム

ワールド

トルコ大統領、国連総長と電話会談 「シリア紛争は新

ビジネス

米新規失業保険申請は9000件増の22.4万件、緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 2
    100年で1.8mの表土が消失...フロリダの大地を救うのは「米作り」? 鳥たちも集まって一石三鳥
  • 3
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」なのか?
  • 4
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 5
    「冗談かと思った」...人気ビーチで目撃されたのは「…
  • 6
    放射能汚染がウクライナ戦争を終わらせる──プーチン…
  • 7
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 8
    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    電車の遅延が減る? AIカメラで豪雨対策...JR武蔵野…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 8
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 9
    「すぐ消える」という説明を信じて女性が入れた「最…
  • 10
    白昼のビーチに「クラスター子弾の雨」が降る瞬間...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中