最新記事

新型コロナウイルス

長期的な副作用は否定できなくてもワクチン接種は受けるべきか

Unknown COVID Vaccine Side Effects May Appear After Millions Immunized

2020年12月4日(金)16時20分
カシュミラ・ガンダー

イギリスは異例の速さでワクチンを承認、来週にも摂取を開始する(写真は11月30日、アストラゼネカ社のワクチン開発現場を視察したボリス・ジョンソン英首相) Paul Ellis-REUTERS

<コロナに感染する方が死ぬリスクは高く、多くの人がワクチン接種を受けるほど早く集団免疫を獲得して元の日常に戻れる?>

新型コロナウイルスのワクチンは稀に長期的な副作用が出る可能性があり、それが明らかになるのは数百万もの人々が接種を受けた後かもしれない――複数の専門家が、本誌にこう語った。それでも、世界で140万人の死者を出し、今も多くの国で猛威を振るっているウイルスに対抗する免疫を獲得することには、リスクを遥かに上回る利点があるというのだが。

現在、欧米ではファイザー/ビオンテックと、モデルナ、アストラゼネカが開発しているワクチンが最も有望視されている。第3相の治験では、ファイザー/ビオンテックとモデルナのワクチンに95%以上の予防効果が認められ、アストラゼナカのワクチンについては、2回とも全量を投与した場合に62%の有効性、1回目に半量、2回目に全量を投与した場合に90%の有効性が確認された。

12月2日には、イギリスが西側諸国で初めて新型コロナウイルスのワクチンをスピード承認。規制当局が独立調査を行い、ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチンにゴーサインを出した。英政府は来週の前半から、重症化リスクの高いグループを対象としたワクチン接種を開始したい考えだ。アメリカでは、ファイザーとモデルナが米食品医薬品局(FDA)にワクチンの緊急使用許可を申請。年内に出荷が始まる可能性があると期待されている。

有望ワクチンの副作用は?

ワクチンの副作用は、数日で消失する軽い症状や腕の痛みといった軽いものか、アレルギーや自己免疫疾患のような重篤なものの2種類に分かれる。

一般に、多くの副作用は予防接種を受けてから2カ月以内に出現する。従って、新型コロナウイルスワクチンに重篤な副作用があれば、これまでの治験で症状が出ている可能性が高いと専門家は本誌に語った。

モデルナのワクチンの場合、短期的な副作用としては予防接種時の痛み、倦怠感、筋肉や関節の痛み、頭痛などが確認されている。ファイザー/ビオンテックは、よくみられる副作用として倦怠感と頭痛が報告されており、アストラゼネカのワクチンはモデルナやファイザーと同様の副作用に加えて、熱っぽさを感じる場合があるという。いずれも、体の免疫反応を起こしていることを示す、歓迎すべき兆候だ。

長期的またはごく稀な副作用は?

専門家によれば、何百万もの人々がワクチン接種を受けた後に、長期的な副作用や稀な副作用が出現する可能性もある。

ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院国際ワクチンアクセスセンターのウィリアム・モス所長は、そうした副作用は、FDAをはじめとする保健当局がワクチンを承認する時点では分からないと指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中