最新記事

新型コロナウイルス

長期的な副作用は否定できなくてもワクチン接種は受けるべきか

Unknown COVID Vaccine Side Effects May Appear After Millions Immunized

2020年12月4日(金)16時20分
カシュミラ・ガンダー

科学者やワクチンの製造元、政府当局は、ワクチン接種が始まった後もどのような副作用が出現するか監視を続けなければならない。バラク・オバマ前大統領の下で保健担当次官補を務め、現在はハーバード大学公衆衛生学大学院で教授を務めるハワード・K・コーは、「どんなワクチンも、信用性を確保するためには監視とその結果報告がきわめて重要だ」と述べた。

しかし本質的に、稀な副作用はまさに「稀なもの」だと、ラホヤ免疫研究所感染症・ワクチン研究センターのアレッサンドロ・セッティ教授は指摘する。問題が出現した時に、原因がワクチンなのか、それともその人が発症した別の病気なのかを特定するのが難しい可能性もある。「健康に悪影響が出た場合、その一部は偶然で、ワクチンとは関係ない可能性もある」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家であるピーター・チンホン教授は言う。

ワクチンは健康な人の体内に入れるものであるため、承認にあたっては、薬などよりも厳しい安全基準が設定されている。英レディング大学薬学部のアル・エドワーズ准教授は言う。「『未知の不確定要素』はあり、想定外のことが起こる可能性もある。だが一般に、今のワクチンはこれまで以上に安全だ。組成、保管、流通と管理のどの段階においても清潔で管理が行き届き、純度の高いワクチンをつくる製造能力が格段に向上しているからだ」

副作用より感染の方が高リスク

本誌の取材に応じた専門家たちは、新型コロナウイルスのワクチン接種には、潜在的なリスクを遥かに上回る利点があると語った。

ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院のモスは、次のように語る。「アメリカはまだ感染拡大を抑制することができていない。感染すれば死ぬ可能性もあるのだから、チャンスがあればすぐにでもワクチン接種を受けるのが賢明だろう。感染リスクや重症化リスクが高い人々にとっては特に、リスクを上回る利点があると思う」

サウスカロライナ大学の免疫学者プラカシュ・ナガルカッティ教授も、同じような考えだ。「特に重症化リスクが高い人は、できる限りはやくワクチン接種を受けるべきだし、ワクチン接種を受ける人が多いほど、集団免疫が達成されやすくなり、新型コロナウイルス感染症を撲滅して普通の生活に戻れる可能性が高まる」

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中