最新記事

はやぶさ2

「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの試料、NASAは研究室を建設して研究保管

2020年12月10日(木)18時30分
松岡由希子

地球外試料の特性評価や文書化、保管などに特化した新たな研究室がNASAのジョンソン宇宙センター(JSC)に建設されている  クレジット:RS&H

<現在、米ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センター(JSC)では、地球外試料の特性評価や文書化、保管などに特化した新たな研究室が建設されている...... >

小惑星探査機「はやぶさ2」によって地球近傍小惑星「リュウグウ」で採取された試料を収めたカプセルが2020年12月6日、豪州南部ウーメラ立入制限区域(WPA)で回収され、8日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の相模原キャンパス内に搬入された。

JAXAは、2021年末までに、NASA(アメリカ航空宇宙局)をはじめとする6つの研究チームにリュウグウの試料を配分し、その分析を世界規模ですすめる。

origin_1.jpg

回収されたはやぶさ2のカプセル=6日、オーストラリア南部ウーメラ近くの砂漠(JAXA提供)

リュウグウの試料をNASAに、ベンヌの試料をJAXAに

JAXAとNASAは、「はやぶさ2」が採取したリュウグウの試料の一部をNASAが受け取る代わりに、NASAの宇宙探査機「オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)」が地球近傍小惑星「ベンヌ」で採取した試料の一部をJAXAに提供するという取り決めを交わしていた。

いずれのミッションも炭素質を主成分とする「C型小惑星」を探査するというもので、太陽系初期の成分が残存していることから、「太陽系がどのように形成され、その後、どのようにして生命が出現するようになったのか」を解明する手がかりになると考えられている。「オサイリス・レックス」は、2020年10月28日、ベンヌの表面から60グラム以上の試料を採取することに成功し、2023年に地球に帰還する予定だ。

NASAは地球外試料の特性評価、保管などに特化した研究室建設

現在、米ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センター(JSC)では、地球外試料の特性評価や文書化、保管などに特化した新たな研究室が建設されている。

2021年12月には、NASAの地球外物質研究探査科学部門(ARES)に所属する中村圭子博士とクリストファー・スニード博士が来日して、リュウグウの試料をジョンソン宇宙センターに持ち帰り、人間が地球外で収集した7つ目の地球外試料としてこの新研究室に保管される見込みだ。2023年に回収予定のベンヌの試料もここに保管される予定となっている。

中村博士、スニード博士らの研究チームは、新研究室内でリュウグウの試料を分析する。リュウグウの試料はわずか10ミリグラムの小さな物質とみられるが、有機含水化合物と鉱物との混合など、多くの新たな発見がもたらされると期待されている。

スニード博士は、リュウグウの試料の分析に先立ち、現在、金属とガラスでできた密閉された箱に手袋を突っ込んで小さな粒子や鉱物粒子を扱う方法を実験している。スニード博士によると「試料が水や空気に反応しないように箱の中を窒素で満たすと、過度に乾燥して、静電気が起きてしまうのが課題だ」という。また、操作棒で動かし、小さな粒子を取り上げて扱うことができる専用デバイスの開発もすすめられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF金融安定報告、軟着陸への楽観論に警鐘 三重苦

ビジネス

IMF経済見通し、24年世界成長率3.2% リスク

ビジネス

中独首脳会談、習氏「戦略的観点で関係発展を」 相互

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中