最新記事

バラク・オバマ

オバマ回顧録は在任中の各国リーダーを容赦なく斬りまくり

Obama’s Frank Take on World Leaders

2020年11月24日(火)19時10分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)

「米地方政界の派閥のボスみたいだ。核兵器と国連安全保障理事会の拒否権を持っていることは別にして」と、オバマは言った。「周りは笑ったが、私は大真面目だった。まさにプーチンは、シカゴやニューヨークの政界を牛耳っていた人物を思わせた。タフで抜け目なく、感情に流されず、得意の領域から逸脱しない。利益供与や賄賂、脅し、ペテン、そして時には暴力を使うことも取引のためならいとわない」。そういう人物は「信用できない」とオバマは書く。

オバマはトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領や、チェコのバツラフ・クラウス大統領(当時)ら東欧の指導者の一部にも不信感を抱いていた。民主主義の実現に向けた彼らの関わり方を、薄っぺらなものに感じていた。

エルドアンについては「私の要請におおむね誠意を持って対応してくれた」としながら、「さまざまな不満や、批判されたと感じたことについて話すときには、声が1オクターブ高くなった。民主主義や法の支配の推進に向けた彼の取り組みは、自身の権力維持の役に立たなくなったらあっさり放棄するだろうという印象を強く受けた」と書く。

クラウスについては「(2008〜09年の)経済危機を受けたナショナリズムや反移民感情、EU懐疑主義の高まり」を象徴する人物ではないかと懸念するようになった。「冷戦終結後に世界に広まった、民主化や自由化、統合化に向けた希望の波が引き始めていた」と、オバマは書く。「驚いたことに、クラウスは米上院の共和党議員に交じってもなじんだろうし、エルドアンはシカゴ市議会の陰の実力者として君臨しそうな人物だった」

オバマはヨーロッパの同盟諸国に対しても、特にギリシャの債務危機問題が深刻化した2011年以降は不信感を募らせていった。ドイツやフランスのように財政が比較的健全な国に景気刺激策の導入を強く促したが、「努力は無駄に終わった」と言う。

中国の覇権はまだ遠い

オバマはドイツのアンゲラ・メルケル首相を「正直で知的で優しい」人物と高く評価していた。だが一方で、彼女があまりに保守的で、ドイツ政治の制約を抜け出せないことも認識するようになった。

やはり中道右派の指導者だったフランスのサルコジについては、二枚舌で全く信用ならない人物だと分かったと言う。「彼は自国のことについて明確な方針を立てられる様子ではなかった。まして、ヨーロッパのことなど考えられるはずがなかった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高の流れ引き継ぐ 半

ワールド

香港の社会民主連盟が解散、民主派政党は皆無に

ワールド

ブラジル3─5月期失業率、6.2%に低下 予想以上

ワールド

イスラエル、ガザ北部に避難命令 トランプ氏は戦争終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中