最新記事

米大統領選

政権移行期にトランプがやりそうな「破壊活動」

Trump Has 70 Days to Undermine Joe Biden, Even If He Eventually Concedes

2020年11月9日(月)18時25分
スティーブ・フリース

11月7日、ゴルフからホワイトハウスに戻ったトランプ大統領。バイデンへの政権移行をじゃまする時間はまだ2カ月以上残されている Carlos Barria-REUTERS

<腹いせや自分の足跡を残すために残る任期を「活用」する大統領は過去にもいた。果たしてトランプの選択肢は?>

アメリカ大統領選挙の投票日からさかのぼること半月ほど前。ドナルド・トランプ大統領が出した大統領令に首都ワシントンの官僚たちは目をむいた。140年ほどの歴史のあるアメリカの公務員制度をひっくり返しかねないものだったからだ。

これは新たな職務分類を導入することで、政府機関で働く法律の専門家や科学者をはじめとする、意志決定に関わるポジションの職員の解雇を容易にするというもの。無能にも関わらず現行の規則に守られている職員を排除するのが眼目だというのがホワイトハウスの言い分だ。だが、トランプにとって忠誠心が足りないとか自分の邪魔をしようとしている(と見なした)職員を追い出すさらなる手段になるとの批判は政権の内外から出ている。

ジョー・バイデン陣営からすれば、これは目の前に迫った脅威だ。1月20日の大統領就任式までの2カ月あまりの間に、トランプが政権移行の足をどれほど引っ張ることができるかを示すものだと見られているからだ。

アメリカの歴史を振り返っても、再選されなかった大統領が、自分の足跡を残すため、または自分を倒した次期大統領の足を引っ張ったり、味方に報い敵に報復するために残り任期を「活用」した例は珍しくない。だがトランプは普通の大統領が取るべき行動の枠を超えた(破壊したとも言う)人物であり、ワシントン政界ではとんでもない規模の混乱を引き起こすのではとの懸念の声が聞かれる。

戦争ですら止めるすべはない

冒頭の大統領令は「宣戦布告」に等しいと、バイデン陣営の政権移行チームの関係者は言う。「地獄のような政権移行にしてやれというわけだ」

政権移行をどうやって混乱させようというのだろう。米海軍大学のレベッカ・リスナー助教は言う。「レームダックとなったトランプが次期大統領の足を思い切り引っ張るために取りうる行動はいろいろ考えられる。要するに後でひっくり返すのが非常に難しかったり大変だったりする政策決定を行うわけだ。NATOからの脱退や、イラン問題や中国問題での強引な行動といった可能性もある。戦争を始めようとしても止められない」

専門家に言わせれば、最も差し迫った問題は、トランプが政権移行への協力を拒んだり、各省庁のトップの新政権への協力を禁じたりする可能性だ。「トランプが皆に向かって『連中への協力は最低限にしよう。わざと遅らせるんだ』と言っているのが目に浮かぶ」と、アメリカン・エンタープライズ研究所のノーマン・オーンスティーンは言う。

政権移行は4000ものポストが入れ替わる大事業で、新たなスタッフはできるだけ早く仕事に慣れなければならないから、これは大問題だ。「会社や大学ならば、ある日いきなり幹部が丸ごと入れ替えになって新しいメンバーを迎え入れるような事態は起きないだろう。だがそれをやらなければならないのだ」と、前回の政権移行に労働次官として関わり、ブッシュ政権からオバマ政権への政権移行に関する著書もあるクリストファー・ルーは言う。「敵はその機を狙っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、12月48.8に縮小 9カ月

ワールド

イランで大規模デモ、景気低迷への抗議で死者も トラ

ビジネス

韓国中銀総裁、ウォン安を懸念「経済ファンダメンタル

ワールド

中国百度のAI半導体部門、香港上場を申請
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 7
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中