最新記事

欧州テロ

フランスの次はオーストリア──相次ぐイスラム過激派テロに身構える欧州

U.K. Terror Threat Level Rises to 'Severe' After Austria and France Attacks

2020年11月4日(水)17時45分
ゾーイ・ドリューエット

オーストリアの首都ウィーンの市内で起きた銃撃テロの現場を警備する警官(11月3日)Leonhard Foegervel-REUTERS

<フランス、オーストリアとイスラム過激派のテロが連続し、欧州全域に緊張感が高まるなか、イギリスはテロ警戒レベルを引き上げた>

ヨーロッパでは今、各地でイスラム過激派によるテロが相次ぎ、さらなる攻撃への不安が高まっている。オーストリアとフランスで発生した複数のテロ事件を受けて、イギリスでもテロの警戒レベルが引き上げられた。イギリスの対テロ当局者によれば、それはテロの「可能性がかなり高い」ことを意味する。

イギリスのプリティ・パテル内務大臣は、合同テロ分析センター(JTAC)が、テロの警戒レベルを「重大(substantial)」から「深刻(severe)」に引き上げたことを発表した。

「これは予防措置であり、特定の脅威に基づくものではない」とパテルは言い、イギリス全土で警備体制を強化するなか、イギリス国民は「警戒すべきだが、恐れるべきではない」と注意を喚起した。高まるテロの脅威に対処するために態勢を立て直し、対応策を強化する重要な措置はすでに講じられている。

「イギリスは現実的かつ深刻な国内テロの脅威に直面している」と、パテルは語った。「国民は警戒を続け、不審な活動があれば警察に報告するようお願いしたい」

2日の夜、オーストリアの首都ウィーンでテロとみられる銃撃事件が起き、4人が死亡、17人が負傷した。ナイフとライフルで武装した銃撃犯は、市の中心部にあるユダヤ教の礼拝堂(シナゴーグ)付近をはじめ市内6カ所で発砲した。

テロ発生は避けられない

フランスのニースでは10月29日、ナイフによる襲撃で3人が死亡した。10月16日には教師のサミュエル・パティがパリ近郊で首を切断されて殺害される事件が起きている。

イギリスの警戒レベル引き上げの決定を行ったJTACは、ロンドンにある軍事情報活動第5部(MI5)に拠点を置く機関で、警察、政府、治安機関のテロ対策専門家で構成されている。

フランスにおけるテロ事件によって国内のイスラム教徒コミュニティと政府の間の緊張は高まっており、今後もテロ攻撃は「避けられない」と専門家は本誌に語った。

イギリスの警戒レベルは、昨年11月に5年ぶりに「深刻」から「重大(substantial)」に下がっていた。「深刻」レベルは5段階中2番目に高く、その上には「危機的(critical)」しかない。最高位の「危機的」までレベルが上がったのは、2017年5月のことで、マンチェスター・アリーナでのアリアナ・グランデのコンサートで発生したテロがきっかけだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中