最新記事

日本政治

大阪都構想の住民投票否決で与党内に波紋 解散時期に影響の見方も

2020年11月2日(月)19時30分

大阪市を廃止し、特別区を設置するか否かを問う「大阪都構想」の住民投票が1日、反対多数で否決され、与党内に波紋を広げている。写真は大阪城敷地内から撮影した大阪の街並み。2017年10月撮影(2020年 ロイター/Thomas White)

大阪市を廃止し、特別区を設置するか否かを問う「大阪都構想」の住民投票が1日、反対多数で否決され、与党内に波紋を広げている。与党内では、維新への支持そのものが減ったわけではないとの声が多い一方で、菅義偉首相とパイプの太い維新・公明党そろっての敗北は、首相の求心力や早期解散戦略に影響するとの声も浮上している。

首相は2日朝、大阪都構想の住民投票の結果について記者団に対し「地域の判断なので政府としてコメントは控える」としつつも、「大都市制度の議論に一石を投じた」と述べ、都構想を推進してきた維新への配慮も示した。

自民党内では「住所の区名変更などが受けいられなかっただけで、政策への支持と政党への支持は異なる」(幹部)として、自民党と協力関係にある維新に対する大阪市民の人気が陰っているわけでないとの受け止めも聞かれる。しかし、維新の会の代表でもある松井一郎大阪市長は都構想否決を受け、2023年までの「残りの市長任期をもって政界を引退する」と表明。関西での圧倒的な人気をてこに全国への浸透を狙う維新の戦略自体が問われる結果となった。

前回2015年の住民投票で都構想に反対した公明党が今回は賛成に転じたが、公明党支持層の5割が反対に回った結果も、与野党で驚きをもって受け止められている。

自民党内では「新型コロナの感染が拡大している間は、(集会などの選挙活動が制限される)公明党は戦力として使えないことが明らかになった」(竹下派)として、感染終息前の早期衆院解散は難しいとの見解が聞かれる。野党からも「安倍政権の7年間、安保法制などで苦しい決断を迫られた公明支持層に対して、中央のガバナンスが効かなくなっているのでは」(立憲民主党幹部)との見方がでている。

公明党内では今回の結果について「住民投票ではこのようなことはよくある」(幹部)と静観の姿勢。しかし維新前代表の橋下徹氏はテレビ番組で、公明党と「表面上は手を握ったが票が動いてなかった」と指摘。自民党内では「大阪での次期衆院選に様々な影響がある」(関係者)と懸念されはじめている。

9月の総裁選で圧勝し、高い内閣支持率を得てスタートした菅首相だが、都構想否決が今後の政権運営に影響するとの指摘もある。首相は官房長官時代から維新の会の松井代表や橋下氏と毎年年末に会食するなど良好な関係にある。次期衆院選で仮に自公が議席を減らし、憲法改正の発議に必要が3分の2を割り込んでも、「自公に維新を加えた連立も視野に入れている」(官邸関係者)とされてきた。

菅首相は無派閥のため政権基盤が盤石とはいえず、二階俊博幹事長や森山裕国対委員長ら与党中枢と公明党・維新との良好な関係が求心力の核とみられていた。このため「首相は今回の敗北で公明党と維新という2枚のカードを失った。来年は経済もより厳しくなる。早期解散はできないだろう。来年10月の任期間際までできないのではないか」(細田派)との見方も出ている。

(竹本能文 編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国共産党化する日本政治
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ


ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月31号(3月24日発売)は「BTS再始動」特集。7人の「完全体」で新章へ、世界が注目するカムバックの意味 ―光化門ライブ速報―

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英BBC、新会長にグーグル元幹部のブリティン氏 抜

ワールド

トランプ氏、5月14─15日に訪中 「歴史的な訪問

ワールド

イラン、紅海要衝の新戦線を警告 本土・島に攻撃なら

ワールド

ロの石油輸出能力40%が停止、近代史上最悪の供給途
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 4
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 5
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 8
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 9
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中