最新記事

感染症対策

ファイザーなどの新型コロナワクチン、「有効性90%超」とはどういう意味?

2020年11月13日(金)18時57分

今週は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発者から朗報が相次いだ。米ファイザーと独ビオンテックは、共同開発するワクチンの臨床試験の暫定データで90%以上の有効性が示されたと発表。翌日にはロシアが、同国のワクチン「スプートニクV」の治験で有効性が92%だったと発表した。写真は4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

今週は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発者から朗報が相次いだ。米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテック<22UAy.DE>は、共同開発するワクチンの臨床試験(治験)の暫定データで90%以上の有効性が示されたと発表。翌日にはロシアが、同国のワクチン「スプートニクV」の治験で有効性が92%だったと発表した。

今回の有効性データが何を物語るかについてまとめた。

今回の治験方法

ファイザーの場合、ボランティア4万3500人超が参加する後期治験で半数にワクチンを、半数にプラセボ(偽薬)を投与し、症状が出てウイルス検査で陽性が確認された人数が94人に到達してから発表した。

治験で有効性が90%超なら、ワクチンを受けていて陽性になったのは94人のうち8人を超えないことになる。つまり、残りはすべて偽薬を投与された人々ということだ。

ケンブリッジ大学のデービッド・シュピーゲルハルター教授(リスク統計学)は「大まかに言って、ワクチン投与と偽薬の比率は8人対86人だったことになる」とし、「これがとても印象的な結果だということを示すのに特殊な統計分析はいらない。衝撃的だ」と述べた。

ロシアでは、スプートニクVを開発したガマレヤ記念国立疫学・微生物研究センターは、ボランティア1万6000人を対象にした後期治験で20人が発症した時点で、有効性92%の暫定データを公表した。被験者の約4分の1が偽薬を投与された。センターは被験者数を4万人に拡大する方針。

ケンブリッジ大のシュピーゲルハルター教授はスプートニクVについては「ある程度効果があることを示したが、その程度を推定するには十分ではない」とした。

大規模治験で必要な感染者数

何人かの専門家は、理想的にはワクチン有効性について信頼できる評価をするには数万人規模の治験で、150人から160人の感染を確認・観察することが必要としている。ただ、これは経験則的なもので、まださまざまな判定の余地がある。

スイス臨床試験機関(SCTO)によると、治験で信頼できる判断をするのに何人が必要かという規制上の基準はない。「(感染者の)数は疾病やリスク要因にもよる。かなりケースバイケースの評価になる」と同機関は指摘する。

規制当局は一般的に、治験の評価が、対象のワクチンや薬と無関係にたまたま発生した事象ではないということを見るため、少なくとも95%の確率を目指す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中