最新記事

2020米大統領選

主戦場ペンシルベニアを制するのはトランプか、バイデンか

Inside the Fight for Pennsylvania

2020年10月20日(火)19時20分
スティーブ・フリース

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の記者チャールズ・マケルウィーによると、有権者10万人未満の郡すべてで共和党の登録有権者が前回より増えている。州全体で見ると依然として民主党支持者が80万人ほど多いが、その差はこの4年間で16%ほど縮まったという。

郊外住宅地でトランプ陣営がよく持ち出すのは、人種差別に反対する抗議運動の「過激化」で、あたかもバイデンが暴動をあおり、警察を敵視しているかのような言説をばらまいている。黒人票も取り込みたいから、トランプ陣営は選挙CMに黒人の元NFL選手を起用し、「(副大統領時代の)バイデンは大勢の黒人男性を投獄した。トランプ大統領が彼らを解放した」と言わせている。

とにかく農村部と準郊外地で4年前のリードを広げ、郊外住宅地での失点を少しでも減らすこと。これが共和党の目標だ。

バイデンに独自の強み

バイデン陣営も負けてはいない。民主党の予備選に出馬して最初の演説会場には、ピッツバーグ市内の労働会館を選んだ。そして「皆さん、私がなぜここに来たか。今度の選挙でトランプに勝つためには、まずこの州で勝つ必要があるからだ」と訴えた。

バイデン陣営の同州責任者ブレンダン・マクフィリップスに言わせると、最近まで対面の選挙運動を控えたことや現地事務所を置かなかったことはマイナスにはなっていない。過去3カ月で陣営スタッフやボランティアは500万人近い有権者に電話をかけ、あるいは電子メールでメッセージを送った。

前回のクリントンは4万4000票差で負けたが、そのくらいはフィラデルフィア郊外で挽回できるともいう。郊外住宅地は反トランプ色が濃く、2018年の中間選挙では下院の3議席を奪還できた。農村部での巻き返しも図り、既に「250回以上」のイベントを開いた。

マクフィリップスは言う。「私たちは州内各地をくまなく訪れ、有権者全員と話をするよう全力を挙げている。誠実に対話し、投票を頼めば、多くの有権者を取り返せると考えている。(共和党が強い地域で勝つのは困難でも)、差は縮められる。それが決定的な違いを生むはずだ」

そしてバイデンには、クリントンともトランプとも違う強みがある。隣のデラウェア州選出の上院議員として36年のキャリアを積み、その間にペンシルベニアの労働組合や産業界の有力者とのつながりを深めたことだ。USW(全米鉄鋼労組)ペンシルベニア支部長のボビー・マコーリフは言う。「バイデンは私たちの問題を理解している。(4年前の)トランプは関税引き上げで鉄鋼業界を再生すると主張し、それに心を動かされた組合員もいたが、実際は今も多くの雇用が国外に流出し続けている」。だから同支部は今回、早々にバイデン支持を表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社を支

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

アングル:バフェット後も文化維持できるか、バークシ

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 8
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 9
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中