最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選、候補者に「万が一の事態」が起きたらどうなる?

2020年10月7日(水)16時21分

ジョージワシントン大学政策運営大学院のララ・ブラウン大学院長は、候補者が死亡した場合、投票先を州法で拘束される選挙人が新たな候補に投票先を変えることが認められるべきか否か、対立政党が訴訟を起こすとしても不思議はない、と話す。

「最高裁がこのような論争をどのように処理するかという点が、今まさに最も興味深い問題になりつつある」とブラウン氏は語る。

だが、ロヨラ・メリーマウント大学法科大学院のジャスティン・レビット教授は、特定の候補者が一般投票で勝利したことが明らかな場合には、政党が有権者の意志を無視する試みに出る可能性は低いとの見方だ。

<選挙人投票の後、連邦議会がその結果を承認する前に、勝利した候補者が死亡した場合はどうなるか>

選挙人による投票が済んでも、さらに1月6日に召集される連邦議会が開票結果を承認しなければならない。選挙人投票の過半数を獲得した候補者がその後死亡した場合、連邦議会が事態をどのように収拾するかは必ずしも明確ではない。

合衆国憲法修正第20条では、次期大統領が就任日前に死亡した場合には、次期副大統領が大統領になると規定している。だが、ある候補者が正式に「次期大統領」になるのが、選挙人による投票で勝利した時点なのか、連邦議会が開票結果を承認した時点なのかは法律的に結論が出ていない。

連邦議会が死亡した候補者に対する投票を無効とし、したがって過半数を獲得した候補が誰もいないという結果になれば、次期大統領の選任は下院に委ねられ、選挙人投票の上位3人の中から選択することになる。

こうした不測の事態による選出においては各州の代表がそれぞれ1票を行使する。下院では民主党が過半数を占めているが、50州のうち26州を共和党が握っているため、代表数では、現時点において共和党が優位に立っている。

ただし、下院435議席はすべて11月の選挙で改選されるため、次期連邦議会の勢力分布がどうなるかはまだ分からない。

これまでのところ、勝利した候補者が選挙後・就任前に死亡した例は1件もない。最もそれに近い例は、1872年11月29日に死亡したホレス・グリーリー候補のケースだ。ユリシーズ・グラント候補に敗れたが、グリーリー候補は選挙人66票を獲得。しかし、死亡によって、その票は主として同じ陣営の副大統領候補及び他の弱小候補に分割される結果となった。

<連邦議会が選挙人投票の結果を承認した後に、次期大統領が死亡または再起不能となった場合はどうなるのか>

合衆国憲法によれば、次期大統領は、連邦議会が選挙人投票の結果を承認してから2週間後、1月20日の就任式で就任宣誓を行う。次期大統領が死亡した場合には、次期副大統領が1月20日に就任宣誓を行う。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、23年度は世界販売・生産が過去最高 HV好

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中