最新記事

米中対立

米当局、TikTokとWeChatを20日から提供禁止 トランプ「急展開も」

2020年9月19日(土)08時05分

米商務省は18日、中国発の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の米国内でのダウンロードを9月20日から禁止する方針を明らかにした(2020年 ロイター/Florence Lo)

米商務省は18日、国家安全保障上の懸念を理由に、中国発の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の米国内での新規ダウンロードを20日から禁止すると発表した。

アップルやグーグルなど、米国内のアプリストアでの提供を禁止する。既存のユーザーにアプリの削除や利用停止を求めないものの、アップデートなどをできなくなし、アプリの機能向上阻止を目指す。

商務省は「このようなアプリへのアクセスを排除し、機能性を大幅に縮小することによって米国内のユーザーを保護する」とした。

ロス商務長官は声明で「中国による悪質な米国民の個人データ収集に対抗する措置を講じた」と述べた。

しかし、今回の禁止措置は新規のダウンロードや更新にとどまるなど、予想ほど大掛かりにはならなかった。また、20日の施行前にトランプ米大統領が取り消す可能性もあるという。

トランプ大統領はこの日、記者団に対し、TikTokの案件を支持するか明言しなかったものの、取引が「急速に進む可能性もある」と指摘。「われわれには素晴らしい選択肢がいくつもあり、多くの人々を満足させることができるかもしれない。中国からの完全なセキュリティーを確保する必要がある」と述べた。また、決定を遅らせる必要はなく、すぐに検討するとした。

とりわけTikTokについては、親会社の中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)によるTikTok米事業を巡る協議に時間を与えるため、11月12日まではアプリの提供と更新以外にTikTokの機能に影響する技術面での禁止措置は講じられない。ロス長官はFOXビジネス・ネットワークに対し、「11月12日までTikTokの基盤に影響はない」と語った。

バイトダンスは米ソフトウエア大手オラクルなどと新会社「TikTokグローバル」の設立に向け協議中。オラクルの株価は序盤の取引で1%弱下落した。

TikTokは声明で、商務省の決定に「失望」を表明し、適正な手続きを踏まず、米国民や米国の中小企業に影響の及ぶ「不当な行政命令に対抗していく」とした。

一方、ウィーチャットに対しては20日から、同アプリを通じた米国内での送金や決済サービスなどを禁止する。しかし、米企業による国外での取引には適用されない。米ウォルマートやスターバックスは中国で、ウィーチャットの機能を利用している。

また、ウィーチャットを運営する中国の騰訊控股(テンセント)テンセント<0700.HK>の他の事業への影響はない。

今回の措置は、トランプ大統領が8月に署名したTikTokとウィーチャットとの取引を45日以内に禁止する大統領令に基づく。

アップルやグーグルが米国外のアプリストアでTikTokやウィーチャットのアプリを提供することは禁止されていない。しかし商務省は、米国内での禁止措置が今後拡大される可能性はあるとしている。

テンセントは、商務省の決定は「残念」だが、「長期的な解決を図るため、米政府や他の利害関係者との協議を継続する」と述べた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン攻撃と関係筋、イスファハン上空に

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ

ワールド

北朝鮮パネルの代替措置、来月までに開始したい=米国

ビジネス

個人株主満足度、自動車はトヨタ 銀行は三井住友が首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中