最新記事

米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算

運命の大統領選、投票後のアメリカを待つカオス──両陣営の勝利宣言で全米は大混乱に

THE COMING ELECTION NIGHTMARE

2020年9月25日(金)16時45分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

DYNAMIC GRAPHICS-LIQUIDLIBRARY/GETTY IMAGES PLUS

<民主党が勝てば共和党は郵便投票で不正があったと主張し、共和党が勝てば民主党は支持者の投票が妨げられたと主張する――分断と対立が激化するなかで行われる選挙が両陣営のなじり合いに終わったら...。本誌「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集から>

米大統領選に併せて実施される連邦議会選に向け、今年6月23日にニューヨーク州で行われた民主党の予備選では大番狂わせがあった。党内左派の新人ジャマル・ボーマンがベテランの現職エリオット・エンゲル下院議員を下したのだ。
20200915issue_cover200.jpg
もっとも、正式に結果が出たのは投票日から3週間余りたった7月17日。しかもエンゲルが敗北を受け入れたことで、ようやくボーマンの勝利が確定するありさまだった。

なぜか。接戦だったからではない。速報ではボーマンが大幅にリードしていた。票の集計に問題があり、カウントし直すことになったからでもない。答えは、ただ単純に集計作業に手間取ったからだ。

この予備選ではニューヨーク市の有権者40万人超が郵便投票を行った。郵便投票では郵送された封書を1通ずつ開けて、票の有効性を確認した上でカウントすることになる。

エンゲルが敗北を認めず、郵便投票に問題があったと主張して訴訟騒ぎにもつれ込んでいたら、今も決着がついていなかっただろう。これはニューヨーク州だけの問題ではない。11月3日に実施される大統領選と連邦議会選が現状ではすんなりと決着することは期待できない。

現職の公職者が選挙で負けたら、平和的に権限を移譲するのがアメリカ政治の伝統だ。だが新型コロナウイルス対策で失態をさらし、支持率低下に苦しむドナルド・トランプ大統領は、この伝統を踏みにじるような発言を繰り返している。

感染拡大を懸念して郵便投票を望む声が多いにもかかわらず、トランプは郵便投票では不正がはびこると根拠なく主張。選挙で敗北すれば、郵便投票の不正を理由にしそうだ。7月19日に放映されたFOXニュースのインタビューで選挙結果を受け入れるかと聞かれたときも、「状況次第だ」と答え、敗北を認めない可能性をにおわせた。

7月末には、郵便投票では公正な選挙が実施できないから、投票日を延期すべきだとまでツイートし、与党・共和党が慌てて火消しに走った。

バラク・オバマ前大統領は今回の選挙がアメリカの規範を脅かす恐れがあるとして盛んに警鐘を鳴らしている。オバマが最も危険視しているのは、トランプが選挙に負けても、不正があったと主張して政権の座に居座ること。加えて、トランプを勝たせるために共和党の州当局者や州議員が有権者登録の手続きを煩雑にし、投票所の数を減らすなどして一部の有権者の投票を妨げていることだ。オバマに言わせれば、こうした試みは「民主主義の下での市民の自由に対する攻撃」にほかならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超

ワールド

インドGDP、7─9月期は前年同期比8.2%増 予

ワールド

今年の台湾GDP、15年ぶりの高成長に AI需要急

ビジネス

伊第3四半期GDP改定値、0.1%増に上方修正 輸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    バイデンと同じ「戦犯」扱い...トランプの「バラ色の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中