最新記事

医療

効果上がるアメリカのリモート診療 コロナ禍による規制緩和が活用後押し

2020年9月23日(水)19時58分

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な流行)が米国の小さな街や辺境の村落にも広がる中、タルラー・ホルムストローム医師が働くサウスカロライナ州カーショー郡カムデンの集中治療室も、顔見知りの患者で埋まっていくようになった。写真は3日、米カリフォルニア州サクラメントの医療法人サッターヘルスの医療施設で、遠隔診療を行うバネッサ・ウォーカー医師(2020年 ロイター/Nathan Frandino)

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な流行)が米国の小さな街や辺境の村落にも広がる中、タルラー・ホルムストローム医師が働くサウスカロライナ州カーショー郡カムデンの集中治療室も、顔見知りの患者で埋まっていくようになった。

ホルムストローム医師が生まれ、今も住むカムデンは人口7000人の小さな町だ。近年、集中治療を専門とする医師・スタッフがもっと大きな都市に流出するなかで、カムデンは集中治療室(ICU)が閉鎖の危機に直面してきた。だが今は、最新テクノロジーのおかげで、遠隔地にいる医師たちがこの村のCOVID-19(新型コロナ感染症)患者の治療を支援してくれる。


地元のカーショーヘルス病院にはカメラその他の機器が設置され、医師や看護師をリモートで雇用する企業が24時間の監視体制をとっている。

セントルイスやヒューストン、ホノルル、さらにはイスラエルやインドなど他の地域でも、小さなブースに腰を据えた医療従事者たちが、リアルタイムで送られてくる患者のデータをコンピューター画面上で見守り、双方向ビデオ通話で、投薬や治療について現地スタッフと言葉を交わす。カーショーヘルス病院のスタッフは、壁のボタンを押すだけで、こうしたテレワーク医療スタッフによる緊急支援を仰ぐことができる。

病院数の減少から農村を救う

ホルムストローム医師によれば、こうした変化が始まったのは4年前だという。おかげで彼女の病院は現在の危機にもうまく対応できている。カムデンも含むカーショー郡では、1600人以上の陽性確定者と34人の死者が出ているが、テクノロジーのおかげで、この地域のCOVID-19患者の多くは自宅に近い病院に入院することが可能になっている。

カーショーヘルスの最高医療責任者を務めるホルムストローム医師は、「今は、患者がICUのベッドから視線を上げれば、自分の治療に当たっているのが友人の娘や息子、あるいは教会に一緒に行く仲間だと分かって安心できる」と話す。

カムデンのように、COVID-19による苛酷な負荷に耐え、予測不可能な患者急増に対処するうえで、こうした先進的な遠隔医療に依存しているコミュニティは増えつつある。

今般の危機が発生するよりかなり前から、米国内の広大な農村地域では、先進的医療を簡単には利用できない状況があった。ノースカロライナ大学の研究者らによれば、米国では2010年以来、農村地域の病院が130カ所以上も閉鎖され、昨年も18カ所を数えている。

農村地域では、糖尿病や高血圧などの基礎疾患の比率も高い傾向が見られる。人口の高齢化・貧困化が進んでいる例も多く、その分、COVID-19に対する脆弱性も高まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳、ハンガリーで会談へ トランプ氏「2週間以

ワールド

G20財務相会議が閉幕、議長総括で戦争や貿易摩擦巡

ビジネス

経済・物価見通しの確度上がれば、それに応じ政策調整

ワールド

米ロ外相が近日中に協議へ、首脳会談の準備で=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中