最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮の新たな女帝・金与正と、浮上した最高幹部「4人組」の運命

Kim’s Sister Rises to Number Two

2020年9月2日(水)19時20分
トム・オコナー(外交担当)

歴史を振り返れば、独裁的な支配者の座を側近や肉親に継がせる試みはどう見ても、成功例ばかりとは言い難い。

中国では1976年の毛沢東の死を受けて、毛の妻をはじめとする「4人組」が後を継ごうとした。だが毛の死後1カ月もたたないうちに全員が逮捕され、文化大革命がもたらした混乱と流血の責任を問われることになった。

ただし、北朝鮮独自の歴史を考えると、金の行動の受け止め方には別の「根本的な問題点」がある。北朝鮮の情報分析サイト、38ノースのアナリストであるマイケル・マッデンはそう指摘する。

「この10年間、北朝鮮の指導者は金正日でも金日成(キム・イルソン)でもないことに、数多くの北朝鮮ウオッチャーが気付いていない」と、マッデンは本誌に語った。「彼は先任者らと異なるやり方をするのだ」

それでも金が第8回党大会に向けた準備を進めるなか、最高幹部の役割の変化に注目が集まる可能性は高い。北朝鮮で党大会が開かれるのは、2016年5月以来のこと。この年まで、党大会の開催は1980年を最後に途絶えていた。

困難には慣れっこの北朝鮮にとっても、次回の党大会は経済的苦境や公衆衛生上の懸念、自然災害が重なったとりわけ厳しい状況下で開かれるものになる。そうした現状を受けて、北朝鮮では自主独立を説く主体(チュチェ)思想に忠実であることが重要だと強調されている。

朝鮮労働党機関紙、労働新聞は8月24日に掲載した記事で、第8回党大会についてこう宣言した。「わが国の発展が直面する厳しい挑戦や障害に打ち勝ち、われわれの革命が新たなレベルに到達する上で記念すべき行事だ」と。

<本誌2020年9月8日号掲載>

【関連記事】金与正に与えられた兄をしのぐ強硬派の役割
【関連記事】文在寅が金与正からぶつけられた罵詈雑言の「言葉爆弾」

【話題の記事】
12歳の少年が6歳の妹をレイプ「ゲームと同じにしたかった」
コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる
介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中