最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮の新たな女帝・金与正と、浮上した最高幹部「4人組」の運命

Kim’s Sister Rises to Number Two

2020年9月2日(水)19時20分
トム・オコナー(外交担当)

magw200902_Kim2.jpg

左から李炳鉄、朴奉珠、金正恩、崔竜海、金徳訓 KCNA-REUTERS

また報道によれば、閉鎖的な北朝鮮経済については、朴奉珠(パク・ポンジュ)国務委員会副委員長と、首相に新任した金徳訓(キム・ドクフン)がより大きな発言権を与えられた。

過去に首相を2度務めた朴は、崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員会委員長に次ぐ序列3位とされる。金銭をめぐる不正行為や、金正恩の処刑された叔父、張成沢(チャン・ソンテク)との親密な関係を理由に懲戒処分を受けたと噂されたこともあるものの、産業界や労働部門で長らく経験を積んできた人物だ。

国家的重要度の高い職場の現地視察など、今や朴は目に見える役割を担っている。8月25日には「共同現地指導」を行うべく、石炭ガス化事業であるC1化学工業の建設現場を金徳訓と訪れた。

議会予算の監督を担当したこともある金徳訓の主な役目は、内閣の長として経済を運営することだ。最高意思決定機関である朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会の一員にも選ばれ、朴、崔、李炳鉄(リ・ビョンチョル)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長、最高指導者の金と肩を並べることになった。

国家情報院の報告によれば、より広範な軍事権限を手にしたのが李と崔富日(チェ・ブイル)党中央委員会軍事部長だ。

近年の李の昇格は兵器実験の成功と密接な関係にあり、過去の重要な発射実験では金と抱き合う李の姿が確認されている。北朝鮮が2018年初めに韓国やアメリカとの交渉路線に舵を切って以来、元空軍司令官の李の存在感は薄くなる一方だったが、朝鮮半島の緊張状態復活で第一線に復帰し、その勲章の数はさらに増えたように見受けられる。

別の強みもあるようだ。大方の見方では、李は金の妻、李雪主(リ・ソルジュ)の父親か祖父、またはおじだという。一方、北朝鮮の警察を管轄する社会安全省(旧・人民保安省)を率いた崔富日は、金のバスケコーチだったと報じられている。

韓国の国家情報院が非公開で行った報告には、韓国の各党議員が参加した。彼らはメディアに対して、あらゆる点から考えて金は今も絶対権力者として盤石な地位を保ち、正式な後継者の存在は確認されていないと強調している。

父とも祖父とも違う男

36歳の若き指導者である金は珍しいことに、「予想外かつ不可避な課題」に直面し、現行の経済5カ年戦略には「至らない点」があると、8月19日に開催された党中央委員会総会の演説で認めた。

しかし、この率直な姿勢は金への個人崇拝の衰えを示す兆候ではなく、妹をはじめとする最高幹部らに権力を譲る意向の表れですらない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

フィリピン3月CPI、+4.1%に大幅加速 輸送費

ワールド

ブルガリア国民のユーロ支持、中東紛争でさらに高まる

ワールド

台湾野党党首、中国へ「平和に向けた歴史的な旅」 習

ビジネス

景気一致指数2月は1.6ポイント低下、2カ月ぶりマ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 9
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 10
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中