最新記事

フェイクニュース

コロナウイルスにまつわる偽情報の蔓延で数百人が死亡していた 

2020年8月14日(金)18時15分
松岡由希子

感染が拡大するインドでは、偽情報も拡散していた REUTERS/Adnan Abidi

<新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に伴って、噂やデマを含め、真偽不明の情報が大量に氾濫した。その実態が調査された...... >

噂やデマを含め、真偽不明の情報が大量に氾濫して信頼すべき情報が見つけづらくなり、多くの人々に混乱や動揺をもたらす「インフォデミック」が、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に伴って深刻な社会問題となっている。「インフォデミック」とは、「インフォメーション(情報) 」と感染症の伝染を指す「エピデミック」を合わせた言葉だ。

このほど発表された研究論文によると、新型コロナウイルス感染症にまつわるインフォデミックが、人々の生命や健康をも脅かしていることが明らかとなった。

多くの噂や偏見、陰謀論が流布

バングラデシュ国際下痢性疾病研究センター(Icddr,b)、豪ニューサウスウェールズ大学らの国際研究チームは、2019年12月31日から2020年4月5日までの間、ニュースサイトやフェイスブック、ツイッターなど、オンラインプラットフォームで広まった新型コロナウイルス感染症に関する噂や偏見、陰謀論とその公衆衛生への影響について分析。一連の研究成果を2020年8月10日に「米国熱帯医学ジャーナル(AJTMH)」で発表した。

研究チームでは、北米、欧州、中国、日本を含め、世界85カ国25言語で2311種の噂や偏見、陰謀論を特定した。そのうち噂が89%と大半を占め、7.8%が陰謀論、3.5%が偏見であった。

1月21日から4月5日までに新型コロナウイルス感染症にまつわるインフォデミックの波が3回現れている。インフォデミックの第一波は、中国湖北省武漢市で感染が広がった1月21日から2月13日で、2月14日から3月7日までの第二波がこれに続いた。欧米で感染が拡大した3月8日から3月31日までの第三波は、第一波や第二波に比べて、より多くの噂や偏見、陰謀論が流布した。

メタノールを飲んで約800人が死亡、ウシの尿や糞が効くという偽情報も

噂は、新型コロナウイルス感染症の疾病や感染、死亡率にまつわるもの、予防策や治療法に関するものが多くみられた。予防策として「高濃度アルコールの摂取がウイルスの消毒になる」という偽情報がイランなど世界各地で広まり、新型コロナウイルス感染症の治療に効果があると信じてメタノールを飲んだ人のうち、5900人が入院、約800人が死亡し、60名が失明した。

インドではSNS経由の偽情報で多くの人々がウシの尿を飲んだり、糞を食べたりした。また、サウジアラビアではラクダの尿が治療に効くとする偽情報も出回った。他にも、ニンニクを食べる、暖かい靴下を履く、胸にガチョウの脂肪をまき散らすと予防に効果的などの噂が流布していた。

「深く息を吸って10秒我慢し、咳が出たり、息切れするといった不快な症状がなければ、新型コロナウイルスへの感染の可能性は低い」など、不確かな情報源に基づく自己診断法なども広く拡散された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中